エージェントでギアを上げる: ソフトウェア定義車両のセキュリティを確保
Florian Haubner
Industry Architect Lead Automotive EMEA
Vesselin Tzvetkov
Senior Cybersecurity Advisor, Office of the CISO
※この投稿は米国時間 2026 年 7 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
自動車業界は、新しいテクノロジーの導入を加速させるなかで、重要な岐路に立っています。従来のコネクテッド カーの時代は、ソフトウェア定義車両(SDV)の時代へと移行しました。SDV の時代は、多くの新機能が無線で提供され、急速にイノベーションが起こるのが特徴です。
次世代の SDV は、AI とエージェントを統合することで、未加工のテレメトリーをリアルタイムで実用的な分析情報に変換できるようになるため、車両が環境やユーザーとどのようにやり取りするかを根本的に考え直すことが可能になります。SDV のサポートとセキュリティを強化するために、Google Cloud と Valtech は提携して、Google Cloud 上に構築された、スケーラビリティの高い AI 対応のコネクテッド カー プラットフォームである Nexus SDV を開発しました。この開発者向けのモジュール式オープンソース ソリューションは、最大 1 億台のデバイスを管理できるように設計されており、Android Automotive OS(AAOS)と深く統合されているため、データフローと車内エクスペリエンスを合理化できます。
このたび、Nexus SDV のオープンソース コアの最初のリリースを発表いたしました。このコアは、Arm ベースのコンピューティングと Bigtable を通じて総所有コストをどのように削減できるかを示すとともに、次世代の自動車インテリジェンスを構築するための AI ネイティブ環境を提供します。
Nexus SDV での AI 主導のエクスペリエンス
Nexus AI はプラットフォームのインテリジェント エンジンとして機能し、車両を受動的なデータソースから能動的なエージェント パートナーに変えます。Nexus AI は、Gemini モデルと Gemini Enterprise Agent Platform を使用することで、複雑なテレメトリーをリアルタイムで分析し、自律的な意思決定と高度にパーソナライズされたドライバー サポートのための情報を提供できるため、ユーザーのニーズを予測するインテリジェント エージェントとして効果的に機能します。
重要なのは、この高度なインテリジェンスが、総所有コスト(TCO)の大幅な削減に重点を置いていることです。高効率の Arm ベースのコンピューティングと Bigtable 向けに最適化されたデータ ストレージを使用することで、このプラットフォームは大量のデータ処理に関連する運用コストを削減します。このモジュール式の AI ネイティブ アーキテクチャにより、メーカーは、次世代の車両ソフトウェアに従来関連付けられていた高額なクラウド費用や開発費用をかけずに、フリート インテリジェンスを迅速にスケールできます。
クラウドネイティブな仕組み
Nexus SDV のアーキテクチャは、車両エッジとデータセンターのギャップを埋めるように設計された、モジュール式のクラウドネイティブな基盤上に構築されています。AAOS との深い互換性は、クラウドと車両の緊密な統合の要であり、高忠実度のテレメトリーがリアルタイムで取り込まれ、同期されることを保証します。この堅牢なデータループにより、Nexus AI はインテリジェントなアップデートとサービスを車両に迅速に push できます。
メーカーは、この開発者向けのオープン フレームワークを提供する Nexus SDV により、Google Cloud エコシステムのスケーラビリティと信頼性を活用して、SDV のライフサイクル全体を管理できます。


Architecture for Nexus SDV.
Google Cloud のセキュリティ管理機能による多層防御
安全性を重視した設計やゼロトラスト アーキテクチャなど、Google のセキュアな基盤上に構築された Nexus SDV は、コンプライアンスと脅威保護に関わる煩雑な作業をサポートします。これを実現するために、Nexus SDV アーキテクチャは、6 つの主要な要素にわたって包括的な多層防御セキュリティ モデルを実装しています。
相互 TLS(mTLS)と公開鍵基盤(PKI)Nexus SDV は、暗号化された信頼チェーンを利用して、データ交換が行われる前に車両を認証します。インフラストラクチャは Google Cloud Certificate Authority Service(CAS)を使用して、個別の CA プール(サーバー、工場、登録の CA)を管理し、可用性とセキュリティに優れたルート オブ トラストを確保します。
具体的には、登録サーバーは、初期 TLS handshake 中にクライアントに有効な「工場出荷時」証明書を提示させることで登録を強制し、接続ストリームから直接証明書を抽出して解析することで、車両の ID を明確に証明します。登録中、サーバーは新しい運用証明書を発行する前に、車両から送信された証明書署名リクエスト(CSR)の検証を行います。
Identity and Access Managementこのシステムでは、Keycloak が中央の OpenID Connect(OIDC)ID プロバイダとしてデプロイされる ID ブローカリングを使用します。車両は、mTLS 経由で運用証明書を使用して Keycloak に対して認証を行い、有効期間の短い JSON Web Token(JWT)を受け取ります。
きめ細かいアクセス制御のために、カスタムの NATS 認証コールアウト サービスが動的なサブジェクト権限を提供します。このサービスは、すべてのメッセージング ブローカー接続試行をインターセプトし、JWK 公開鍵を使用して Keycloak JWT を検証し、車両のロールを特定の NATS サブジェクトにプログラムでマッピングします。
サービス間のセキュアな通信には Workload Identity 連携を使用し、パイプラインが GitHub OIDC トークンを一時的な Google Cloud アクセス権と交換して静的認証情報を削除するようにします。一方、GKE Workload Identity では、Kubernetes サービス アカウントを Google サービス アカウントにバインドすることで、Kubernetes Pod が Bigtable などのバックエンド サービスにアクセスできるようにします。
制限付き IAM スコープによってセキュリティが強化され、専用のサービス アカウントが最小限の権限でプロビジョニングされます(データ API が Bigtable からの読み取りのみに制限されるなど)。デプロイ コンテキストで VPC-SC、組織ポリシーの制約、Private Service Connect(PSC)を使用することも、セキュアな基盤の実現に役立ちます。
シークレット管理Nexus SDV は、一元化されたシークレット管理により、機密情報を保護します。すべての機密性の高い構成、データベースのパスワード、暗号署名鍵は、Terraform インフラストラクチャのプロビジョニング中に動的に生成され、Google Cloud Secret Manager 内に厳重に保管されます。
シークレットをアプリケーション コードやコンテナ イメージに組み込むことを避けるために、デプロイ中にシークレットの取得が行われます。代わりに、サービスは署名鍵と認証情報を実行時にのみメモリに直接読み込み、保存時と転送時の両方でデータ漏洩のリスクを最小限に抑えます。
ネットワーク分離ネットワーク分離を強化するため、基盤となるコンピューティング インフラストラクチャは厳重に保護されています。Nexus SDV は、ワーカーノードにパブリック IP アドレスがないプライベート GKE クラスタで実行されるため、データがインターネットに直接公開されることはありません。さらに、Keycloak PostgreSQL データベースでは Cloud SQL IAM 認証が使用されています。これにより、Cloud SQL Proxy は静的なデータベース パスワードに依存したり、IP 許可リストを管理したりすることなく、IAM ロールを使用してセキュアに接続できます。
セキュア AI フレームワークGoogle Cloud は、セキュア AI フレームワーク(SAIF)のガイダンスに基づき、データ プライバシー、モデル ガバナンス、安全な実行を優先する包括的なエンタープライズ グレードのフレームワークを通じて、これらの高度な AI 機能を保護します。Gemini Enterprise Agent Platform では、説明可能性と安全性の専用の管理機能、継続的な評価とモニタリング、セキュアなモデル レジストリなどの機能を通じて、セキュリティとガバナンスが ML ライフサイクルにネイティブに組み込まれています。
Google Cloud での AI の保護について詳しくは、こちらをご覧ください。
Data API Nexus SDV では、ダウンストリーム アプリケーションや外部クライアントが Bigtable などのデータストアに直接アクセスすることを許可するのではなく、カスタムの Data API を介してデータ取得をルーティングします。このマイクロサービスは、セキュアな抽象化レイヤとして機能し、特定の車両 ID、センサーデータの種類、事前定義された時間枠のクエリなどを、厳しく制約された Bigtable の行範囲スキャンと列フィルタに厳密に変換します。
これにより、構造化されたデータアクセス パターンを適用するセキュアなゲートウェイとして機能します。
Nexus SDV の利用を始める
Nexus SDV は自動車インテリジェンスの新時代を象徴するものであり、セキュアで費用効率の高いエージェント プラットフォームを提供します。これにより、メーカーはオープンソース フレームワークで AI の力を最大限に活用できます。ソフトウェア定義車両をどのように再定義しているかについて詳しくは、こちらをご覧ください。
- 自動車 EMEA、業界アーキテクト リード、Florian Haubner
- CISO オフィス、シニア サイバーセキュリティ アドバイザー、Vesselin Tzvetkov


