COVID-19 の影響下で Sesame がサービスを転換して地元の医療機関を支援
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 5 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大により、誰もが新しい現実を受け入れることを余儀なくされています。この現状はとりわけ医療業界にとって切実です。これは大規模な医療機関や製薬会社に限ったことでなく、小規模経営の個人開業医に至るまで、医療に従事するほぼすべてのお客様が戦略の練り直しや転換を図っています。
新型コロナウイルスの感染拡大を緩和し、現場で働く従業員を守るために、ほとんどの医療機関では外来患者の受け入れを重症者に限定し、重症者以外のほとんどの患者に対してはオンライン診療を提供する方向に転換しています。しかし、小規模経営の個人開業医の場合は、IT リソースに限りがあることから、すぐにオンライン診療モデルへ移行することは極めて困難です。
こうした小規模機関を支援しようと、Google Cloud スタートアップ プログラムを最近修了したばかりの Sesame は、サービスをすばやく見直し、リモート設定で全面的に患者とつながることができる使いやすいプラットフォームの提供を開始しました。こうした遠隔診療サービスを利用することで、COVID に関係のない問題に対処できる医師の数が増え、ひいては医療システム全体の負担を軽減できるようになります。Sesame がこれほどすばやく事業を転換できた理由と、このサービスが米国中の機関でどのように役に立っているかを詳しくご紹介します。
サービスを転換し、遠隔診療サービスの提供を開始した Sesame
Sesame は、患者と医者をつなぐ、より革新的な新しいアプローチを提供するために設立されました。透明性が改善されてアクセスしやすく、誰にでも手ごろな費用で提供できる医療を目指して、Sesame は患者と医療機関を直接ウェブでつなぐ直接決済マーケットプレイスを構築しました。皮膚がんスクリーニング検査や歯科クリーニングから MRI に至るまで、あらゆる医療を対象としたこのマーケットプレイスは、現金ベースの最低料金制と、サービス内容が明確に表示されているのが特徴で、患者は適正な料金で適切な治療を簡単に見つけることができるようになっています。また、小規模の独立系開業医の場合は、患者の診療予約や支払い請求、新規患者の獲得などの機能がさらにわかりやすく、管理しやすくなっています。
1 月に COVID-19 という言葉が初めて世界中で使われるようになった頃、Sesame はまだ、カンザスシティとオクラホマシティで 2 つのマーケットを運営する存在にすぎませんでした。遠隔診療はロードマップにはありましたが、優先順位は高くなく、ほぼすべての事業が地元の契約機関の外来診療関連のものでした。しかし、感染拡大に伴い、Sesame はすばやく事業を転換し、Twilio と Google Cloud を活用して構築した新しい仮想予約システムと遠隔診療システムを導入したのでした。
感染拡大が急速に進み、小規模の診療所が緊急性の低い外来診療の休止を決め始めたとき、Sesame チームはこうした診療所が診療を続けられるように支援できる方法を考える一方で、新しい診療方法がないかと模索し始めました。同チームはすぐに、医療機関が診療をリモート管理するために利用できる仮想予約システムのワイヤフレームを作成しました。5 日後には完成させて、利用を開始しています。
ヒューストンにある Vida Family Medicine の Rebecca Berens 医師は、次のように述べています。「パンデミックの間でも、Sesame を使うことで仮想サービスを必要とする州内の患者さんにリーチして、すばやく簡単に遠隔診療を開始できるようになりました。地元向けにはすでにこうしたサービスを提供していましたが、Sesame のおかげでより大きなプラットフォームを使って、より多くの患者さんにリーチできるようになりました。」
現在、Sesame は全米 48 州で導入されていて、そのうちの 86% で同社の仮想予約システムを使う予約方法を取り入れています。これらはすべて、すばやく事業の転換を決め、実行したチームの見事な決断力によるものです。Sesame のバイス プレジデントである Priya Patel 氏は、次のように説明しています。「2 つの小さなマーケットでサービスや戦略をテストしていたものが、ほんの数週間のうちに全米でサービスを提供するようになっていました。この重大な時局に会社が一丸となって大きなことを成し遂げることができたことは、当社にとって非常に良い経験となりました。」
適切な基盤に構築する
Sesame は、極めて迅速に転換できたのは会社創立当初に築いた基盤があったからだとしています。会社が設立されてまず、プロダクト チームは、IT に詳しくない人であっても簡単に利用できるような、サービスの検索、予約、支払いプロセスを構築する方法を見つけ出そうと、患者と医療機関の置かれた環境を事前に把握することに多くの時間を費やしました。Google Cloud 上に構築し、習得に応じて調整とスケーリングが可能な Google Kubernetes Engine を利用してマイクロサービス アーキテクチャを開発することを決めたのはこの時期でした。
Sesame の共同設立者である Michael Botta 氏によると、HIPAA に準拠したうえ、数週間で全米規模の展開を可能にした診療プラットフォームを開発できたため、この決断は間違っていなかったということです。
同氏は次のように述べています。「当社がこれを成し得たのは、ひとえにモノリシック アーキテクチャを採用しなかったからです。新しいマイクロサービスをビルドして既存のインフラストラクチャと連携させただけで、支払いの管理、検索とチェックアウト間の接続管理、ビデオ会議のバックエンドへの接続、お客様への手順案内ができるようになりました。当社のアーキテクチャと Google Cloud Platform、そして Google チームとの協業によって、この規模のプラットフォームを構築し統合するのに必要と考えたとおりに仕上がりました。」
仮想診療の利点
COVID-19 への対応と並行して、Sesame は同社の仮想予約システムを利用する医療機関の数をさらに増やし、医療機関が無料で使えるようにしようと取り組んできました。4 月中旬以降、Sesame を利用する医療機関ネットワークは 50% 以上増加したと推定しています。Sesame を利用する医療機関の数が増えたことで、Sesame はより広範なサービスを提供できるようになり、医療機関はさらに多くの患者を診療できるようになりました。最終的に Sesame や医療機関、そしてその患者を含めたすべての人の経済的負担が軽減されます。また、Sesame の成功により、多くの人が仮想診療の可能性に注目しています。
Sesame の CEO である David Goldhill 氏は、次のように述べています。「仮想予約システムを使うことでこれほど便利になることに、外科医でさえも驚いています。COVID-19 が発生する前は、遠隔治療は非常にニッチなサービスでした。しかし状況は変わりました。今は多くの医師や医療従事者に利用を勧め、この新しい方法を使えばどれほど素晴らしい医療を提供できるかを実感してもらいたいと考えています。」
COVID-19 によって、医療業界を取り巻く環境は、新しいテクノロジーを追跡しすばやく採用するというように、これまでとは一変しました。Sesame のようなパートナーや、Google 独自の Cloud Healthcare API などのサービスを通じて、Google は医療機関と連携し、医療従事者の安全を確保したうえで、最高の患者ケアを提供する手助けとなるソリューションをお届けしようと取り組んでいます。
詳しくは、医療業界のための Google Cloud をご覧ください。
- By Google Cloud 米国医療およびライフ サイエンス部門マネージング ディレクター Chris Sakalosky