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DevOps & SRE

Sabre 社によるデジタル トランスフォーメーションを成功に導く SRE の活用方法

2021年12月7日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 11 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: 今回は、Sabre 社で SRE 担当ディレクターを務める Kenny Kon 氏にお話を伺いました。Sabre 社は、Google Cloud とのパートナーシップを活用することで、Google の SRE フレームワークの導入に成功しました。Kenny 氏にその経緯について語っていただきます。

Sabre Corporation は、旅行業界のリーダーとして世界の旅行業界の変革を進めるとともに、航空会社、ホテル、旅行代理店向けに、旅行体験を変革し、変化を続ける顧客ニーズを満たすためのソリューションを開発しています。

こうしたソリューションの開発に向け、デジタル トランスフォーメーションを加速させるために、Sabre はクラウド プロバイダである Google Cloud の協力を得ることにしました。提携先に Google を選んだのは、Google Travel のような旅行サービスの管理を通じて、Google が旅行業界を理解しているためです。また、Google は SRE(サイト信頼性エンジニアリング)を考案するとともに、大規模な自社ビジネスを SRE 原則に則って運用しています。この点に最も興味を惹かれました。

初めはマルチクラウド モデルを採用したものの、変革を加速させることができませんでした。そこで、Google Cloud に統合しました。変革のスピードアップを目指し、Google の SRE(サイト信頼性エンジニアリング)手法を導入したことで、信頼性とスピードのバランスが取れるようになりました。この変革を実現できたのは、Google Cloud の Professional Services Organization(PSO)による直接の支援と Cloud MonitoringCloud Logging のような Google Cloud のツールを得たこと加えて、Google Kubernetes Engine(GKE)Cloud Spanner 上で運用したおかげです。

ここでは、Sabre での SRE 導入からわかった、主な 3 つのポイントをご紹介したいと思います。

1. 文化の刷新と SRE の導入に賛同し、熱意を注げる同僚を見つける

SRE 導入の実現に向けて意欲的に取り組むメンバーを集め、組織内にコミュニティを創りましょう。Sabre で SRE を採用した際には、文化の刷新を支持する人々の数が増えて、全員が団結するようになりました。ある程度の勢いがついたところで、全員が共通言語を獲得し、SLO、SLI、さらには Sabre での測定方法について話し合うようになり、経験を分かち合えるようになったことは、良かったと思います。

Sabre では、コミュニティ形成のための手段の一つとして、毎月ランチ ミーティングを開催しました。これは気軽な集まりで、さまざまなチームがそれぞれの経験や課題を話したり、SLO やトイルなどの SRE に関連する話題について解説したりするものです。また、公開の Google デベロッパー グループ(GDG)を立ち上げ、Google から SRE 分野のエキスパートを何人かお招きして、SRE 原則とベスト プラクティスについて話していただいています。

2. 中間管理職のステークホルダーを巻き込む

組織内での SRE 導入を成功に導くうえで、リーダー層の賛同を得ることが非常に重要なのは言うまでもありません。リソースを確保し、全社を挙げて変革を進めるには、経営陣の賛同が非常に重要です。一方、中間層のリーダーの賛同を優先することは忘れられがちです。職位の低い実務担当者が、ボトムアップで組織に変化を起こすのは困難です。一方、経営陣のみの賛同を得てトップダウンで実行しようとしても、中間層でなし崩しになってしまう恐れがあります。ですから、組織文化の形成やチームの意思決定に直接関わる中間層のリーダーを同じように巻き込むことが欠かせないのです。また、反対意見を避けるためには、中間層のリーダー(プロダクト、オペレーション、エンジニアリングの各チームのマネージャー)、つまり部下を持つ管理職が、目指す変革の裏にある真の動機を理解し、協力してくれるよう仕向けることも重要です。中間層のリーダーがそうしたことを理解しなければ、変革を実務担当者にうまく伝えることができず、チームの目標やリソースの配分にも影響が出る可能性があります。

3. 思い切って専門家の助けを借りる

大規模な組織に SRE を導入することは簡単なことではありません。Sabre では、Google の SRE コンサルティング エキスパートの協力を得ることで、大きな変革を成し遂げることができました。PSO がもたらす価値には、トレーニングだけでなく、こちらの話を傾聴してくれることもあります。Sabre の抱える問題を把握し、かつて SRE 導入という同じ道を歩んだ経験豊富な Google の社員の皆さんが、私たちの話に耳を傾け、状況を分析し、Sabre の目標に合ったアプローチを立案してくれました。PSO のサポートにより、Sabre のエンジニアリング チームはお客様をより重視するようになり、プロダクト、運用、開発の各チームとも連携できるようになりました。しかし、なにより重要なのは、リクエストがブロックされることでせっかくの努力が無駄に終わることがなくなり、Sabre のさまざまなチームの満足度が高まったことです。

PSO と提携したとき、Sabre で鍵を握るステークホルダーが、中間層のリーダーと、部下を持つ管理職であることは、すでにわかっていました。そこで、中間層のリーダーに PSO との話し合いや意思決定の場に必ず参加してもらうようにしました。その結果、社内に支持者が増え、それまで抱えていたギャップの解消につながりました。さらに、中間層が本来の力を発揮して、変革に協力できるようになりました。

Sabre が、PSO の SRE パートナーの協力を得て行った取り組みとしては、サービスの階層化の導入、不運のルーレット(WoM)を通じたインシデント管理方法の改善、クリティカル ユーザー ジャーニー(CUJ)の定義、エラー バジェットの導入などを挙げることができます。

こうした SRE の手法を導入してから、Sabre のビジネスはカスタマー エクスペリエンスを重視したものに近づきました。Sabre は現在、お客様のニーズに合わせてリソースを投資しており、それによりチーム間のサイロ化も軽減しました。また、リクエストをブロックすることなく業務を迅速に進められるため、オペレーション チームの満足度も高まりました。SRE は、Sabre に共通言語と共通のフレームワークをもたらしてくれました。さらに、この規範全体が、SRE により文化として有意義なものとなっています。


- Sabre 社 SRE 担当ディレクター Kenny Kon
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