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データベース

時間と費用を節約して従来のデータベース資産をモダナイズする前に、評価を実施

2023年7月25日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 7 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

企業がアプリケーションやインフラストラクチャをモダナイズする際、多くの IT 関係者はその実現に向けてオープンソース テクノロジーに注目します。そして、オープンソースが支持を得ている分野の一つに、リレーショナル データベース管理システム(RDBMS)があります。PostgreSQL などのオープンソース RDBMS は、Oracle や Microsoft SQL Server のような商用の RDBMS に代わる製品としてますます人気が高まっていますが、こうした変化には、いくつかの理由が挙げられます。

まず、オープンソース RDBMS のほとんどが、従来の独自の RDBMS よりも費用対効果に優れています。オープンソース RDBMS は通常、無料でダウンロードして使用でき、ライセンス料もかかりません。

次に、オープンソース RDBMS は多くの場合、従来の RDBMS よりも柔軟性が高くスケーラブルです。組織固有のニーズに合わせて簡単にカスタマイズでき、必要に応じてスケールアップ / スケールダウンできます。

こうした要因から、オープンソース RDBMS は、あらゆる規模の組織から選ばれるようになってきています。費用対効果、柔軟性、スケーラビリティをはじめとして、従来の RDBMS よりも多くのメリットをもたらします。

Oracle / SQL Server から PostgreSQL への移行

Oracle / SQL Server から PostgreSQL への移行は、困難な作業になることがあります。移行戦略は特定の目標によって異なりますが、移行プロセスをスムーズに進めるのに役立ついくつかの一般的な戦略があります。

  • Database Migration Assessment(DMA)の活用: Oracle データベースまたは SQL Server データベースを PostgreSQL にモダナイズするうえで、必要な労力の詳細な分析情報を提供する評価ツールは数多くあります。このステップの迅速化を図るために、お客様は Google Cloud の自社製ツール、DMA を活用して、Oracle / SQL Server データベースの複雑性を評価することができます。DMA は Google Cloud の「無料」のデータベース評価ソリューションで、移行の労力、費用、予想される投資収益率を見積もります。DMA については、以降で詳しく説明します。

  • コード / スキーマ変換ツールの活用: これらのツールは、人的ミスのリスクの軽減と移行の全体的な効率の向上を支援します。Google Cloud のツールを活用すれば、スキーマとコードを Oracle / SQL Server から PostgreSQL に自動的に変換できます。

  • 段階的なデータの移行: すべてのデータを一度に移行することにはリスクが伴います。そのため多くの場合に、データの小さなサブセットから始めて、段階的に多くのデータを徐々に移行していくことが推奨されます。Google Cloud は、お客様の要件に応じて、データ移行戦略を策定するためのサポートを提供しています。ダウンタイムを許容できる場合でも、リアルタイム レプリケーションが必要な場合でも、お客様の要件を満たすデータ移行ソリューションをご提案します。

  • アプリケーションの変更: データベース エンジンの切り替えには、アプリケーションの変更が必要になることが多々あります。Google Cloud は、アプリケーション リポジトリをスキャンし、新しいデータベース エンジンで実行するために変更が必要な SQL ステートメントを特定できるようサポートできます。

  • 移行したデータのテスト: データの移行後は、それらのデータが適切に機能することを確認するために、テストを行うことが重要です。この段階で必要な作業がいくつかあります。まず、すべてのデータが、ソースとターゲット間で同期されていることを検証する必要があります。この作業には Google Cloud のツールを活用できます。次に、アプリケーションの機能テストを実行し、アプリケーションが期待どおりに動作することを検証する必要があります。そして最後に、パフォーマンス テストを行うことをおすすめします。

これらの一般的な戦略に従うことで、Oracle / SQL Server から PostgreSQL へのデータベース移行をスムーズに成功させることができます。

このブログ投稿の残りの部分では、こうしたクラウド移行の出発点となるデータベース評価プロセスに焦点を当てます。データベース評価では、データベースの専門家が業界のベスト プラクティスやデータ収集ツールを活用して、Oracle または SQL Server から PostgreSQL への移行を成功させるための移行戦略を提供します。

PostgreSQL への移行: データベース移行評価から開始

Database Migration Assessment(DMA)は無料の顧客エンゲージメントであり、データベースのメタデータを収集して、詳細なカスタマイズレポートを提供します。収集されるデータには、データベース オブジェクトの種類、PL/SQL または T-SQL コード、使用中のデータベース機能、現在のリソース使用量、ワークロードの特性といった、詳細なメタデータが含まれます。このデータは、Google Cloud の新しい自社製ツールである DMA を使用して収集されます。

メタデータが収集されると処理が行われ、Google Cloud のデータベース専門チームによって詳細なカスタマイズレポートが提供されます。これには、次の情報が含まれます。

  • Google Cloud がターゲットとする状態のデータベースの推奨事項: 現在のオンプレミスのデータベース ワークロードの特性に基づいて推奨されます。

  • 移行の労力: Oracle / SQL Server のスキーマとコードを PostgreSQL などのオープンソース データベースに変換するために必要な労力(時間単位)が示されます。

  • クラウドのサイズ適正化: 現在のオンプレミスのリソース使用量に関する情報を使って、実際に必要なリソースにしか支払わなくて済むように、Google Cloud データベースのサイズを適正化します。

  • 完全な移行プラン: 最初に移行するデータベースを特定し、後続のデータベースの移行ウェーブを作成します。

以下は、14 個の Oracle データベースを調査した際のレポートから抜粋したものです。この例では、お客様は Oracle から Cloud SQL for PostgreSQL または AlloyDB for PostgreSQL へのモダナイズを考えていました。当初、自社の Oracle データベースのモダナイズは複雑すぎて、多大な労力が必要になるだろうという認識でした。私たちが DMA を使用して移行評価を実施したところ、Google Cloud のスキーマ / コード変換ツールを使用すると、データベース環境の 89% を自動で変換可能なことが確認できました。これは、各データベースを一覧表示し、Oracle / SQL Server と PostgreSQL の互換性を表示した下のグラフに基づいて判断しました。

データベースごとに、データベース オブジェクトとコードを 3 つのバケットに分類します。緑色のバケットは、Google Cloud ツールを使用して自動的に変換できるデータベース オブジェクトを示します。黄色のバケットは、若干の手作業を必要とするデータベース オブジェクト / コードを示します。最後に、赤色のバケットは、Google Cloud のスキーマ / コード変換ツールでは自動的に変換できないことから、完全にリファクタリングする必要があるデータベース オブジェクトを示します。まとめると、グラフ上の緑色が多いほど、Google Cloud 変換ツールを使用して自動的に変換できるオブジェクトが多くなり、お客様の労力が少なくなります。

このお客様にとって、結果は予想以上に良いものでした。当初は総じて、Oracle データベースには多数の PL/SQL コードがあり、これらが環境を面倒なものにしているという印象がありましたが、この可視化によって、Oracle オブジェクトとコードの大部分を自動的に変換できることがわかりました。

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お客様のデータベース移行の複雑さに関する評価レポートの例

次に、各データベースを変換するのに必要な労力についての情報をお客様に提供しました。下のグラフは、移行を完了するのに必要な労力(時間単位で表示)順にすべてのデータベースを示したものです。最初に表示されているデータベースは移行にかかる時間が最も短く、最後に表示されているデータベースは移行に最も時間がかかります。このデータは、最初に移行するデータベースを特定し、移行ウェーブを定義するのに役立ちます。つまり、段階的に移行するデータベース グループを定義できます。

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データベース移行に伴う労力のスコアの例

では、移行を開始するにはどうすればよいのでしょうか。おすすめとしては、最も複雑なデータベースからではなく、最も単純なデータベースから始めることを提案します。これにより、再現性のあるプロセスで移行のブループリントを作り始め、Google Cloud のスキーマ / コード変換ツールやデータ移動ツールに慣れることができます。こうした学習と再現性のあるプロセスを組み合わせることで、より複雑なデータベースの移行を迅速に進めるための土台を構築できます。

このお客様はこれらの結果に満足し、Oracle データベースを AlloyDB にモダナイズするために労力を要しても、高額なライセンス / サポート体制から費用対効果の高いフルマネージド データベース サービスに移行することで高い費用対効果(ROI)が得られると結論付けました。

この例では、お客様に提供したレポートを抜粋してご紹介しましたが、完全なレポートには豊富な情報が含まれています。Google Cloud は、労力の時間の計算に使われる個々のデータベース オブジェクトに至るまで、さまざまなレベルにドリルダウンした情報を提供することができます。

主な機能

DMA ツールはオープンソースで、GitHub から入手できます。現時点では、Oracle データベースと SQL Server データベースをサポートしています。

  • Oracle の場合、DMA はお客様のライセンス ポリシーに基づいて、AWR と AWR 以外(Statspack)の両方のデータベース評価をサポートします。

  • MS SQL の場合、DMA は Perfmon データを活用して、メタデータのみを収集します。

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以下の表は、DMA ツールを使用して収集されるデータの種類を示しています。

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まとめ

現在、Oracle データベースまたは SQL Server データベースを使用しており、それらを PostgreSQL などのオープンソース データベースにモダナイズしたいとお考えの場合は、ぜひ GitHub リポジトリから DMA ツールをダウンロードしてください。または、Google Cloud 営業担当者にお問い合わせください。評価のスケジュールを設定させていただきます。Google Cloud のデータベース専門家が提供する、これらのデータベースのモダナイズに関する推奨事項、ベスト プラクティス、ガイダンスにより、貴社にとって Oracle データベースまたは SQL Server データベースのモダナイズが適切かどうかを評価するためのデータドリブンなアプローチが実現します。


- Google Cloud、データ管理カスタマー エンジニア Celia Antonio
- Google Cloud、データ管理スペシャリスト Pritesh Jani

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