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データベース

グラフ技術を活用した信頼できるエージェント プラットフォームの構築: Yahoo の事例

2026年6月24日
Mikul Bhatt

Director Of Engineering, Yahoo

Bei Li

Sr. Staff Software Engineer, Google Cloud

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※この投稿は米国時間 2026 年 6 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

エージェント型 AI を導入する企業にとって必要なのは、事後対応型のインテリジェンス システムから、プロアクティブなアクション システムへの転換です。これは、必要とされるコンテキストとパフォーマンスを備えたエージェントを構築するとともに、すべての意思決定について説明と監査が可能な、規制当局の要求に対応できるレベルの説明責任を担保するためです。

Google Cloud Next ‘26 では、Agentic Data Cloud でアクション システムを実現する方法について解説しましたが、まさにこのビジョンの好例となるのが Yahoo のデジタル メディア購入プラットフォームです。Yahoo は Google Cloud と提携し、Google データクラウドのグラフ技術を活用して、Seller Agent デジタル メディア購入プラットフォームを構築しました。Seller Agent は、数週間かかる手動プロセスをわずか数秒に凝縮して、完全に管理されたライブ キャンペーンを実行できます。自律システムが厳格な説明責任を維持しながら驚異的なスピードで動作できることを証明するこのシステムは、さまざまな業界で活用できる強力なブループリントとなります。

「Yahoo! の使命は、デジタルの世界を案内する、信頼されるガイドになることです。Google Cloud とのパートナーシップを通して迅速性、透明性、効果、信頼性を確保したエージェント型メディア購入を実現することで、私たちは広告主様に対してもこの約束を果たしていきます。」- Yahoo、収益化責任者、Gabriel DeWitt 氏

このブログでは、エージェント型 AI への移行について詳しく説明し、Yahoo の Seller Agent アーキテクチャがメディア購入におけるスピードと信頼性の課題をいかに解決しているかを検証します。また、このグラフベースのパターンを応用して、皆様の組織で信頼できるアクション システムを構築する方法もご紹介します。

ケーススタディ: エージェント型メディア購入

長年にわたり、プレミアム デジタル広告キャンペーンのような複雑で価値の高いワークフローでは、人手を介した数週間にわたる引き継ぎ、断片化したスプレッドシート、そして手動の分析が必要とされてきました。Yahoo は、エージェント型 AI を使えば、このタイムラインを劇的に短縮し、わずか数秒でキャンペーンを計画して実行できる可能性があることに着目しました。「手動から自律的な実行へ」というこの飛躍は、運用効率を大幅に改善し、投入した予算をより確実に測定可能な成果へと結びつける大きなチャンスでした。

しかし、リスクの高いワークフローに LLM をただ組み込むだけでは問題は解決しません。もし、リアルタイムの広告在庫や、価格設定ルール、ビジネス上の制約を決定論的に理解できていないエージェントが契約や広告掲載の交渉を行えば、ハルシネーションが生じやすくなり、甚大な損失を招く取引となるおそれがあるからです。信頼できるエージェント プラットフォームには、統計的な推測ではなく、確固たる事実に基づいて行動するためのリアルタイムかつ決定版の情報源が不可欠です。

しかも、「スピード」と「事実へのグラウンディング」は必要とされる条件の半分にすぎません。AI エージェントが実際の予算を動かし始めた瞬間、その動作は規制当局の厳しい監視の対象となります。そして規制当局は、特定の決定がなぜ行われ、どのポリシーが適用されたのかについて即座に説明できることを求めてきます。事後にシステムログをさかのぼって調べるような手法は、自律的な実行を管理する手段としては不適切です。実用できるレベルのアクション システムには、後付けではなくワークフローに直接組み込まれた、規制当局の要求に対応可能なガバナンスと監査可能性が必要です。

信頼できるアクション システムのアーキテクチャ

Yahoo! の使命は、デジタル世界を案内する、信頼できるガイドになることです。エージェント型メディア購入は、予算を Yahoo に託し、真の説明責任が果たされることを期待する広告主、代理店、パブリッシャー、そして規制当局に対しても、その約束を広げていくものです。課題は、説明可能、管理可能、監査可能な方法でキャンペーンの実施を自動化することでした。

この課題に対処するため、Yahoo は Google Cloud で実行されるマルチエージェント システムとして Seller Agent を構築しました。バイヤーのリクエストは、Google Kubernetes Engine(GKE)で実行され、Google の Agent Development Kit(ADK)でオーケストレーションされる計画スーパーバイザー エージェントを介して入力されます。スーパーバイザーは、在庫の検出、オーディエンスのマッチング、予測、価格分析、パッケージの推奨、ガバナンスのレビュー、実行など、各リクエストを専門的なタスクに分解します。エージェントは、オープンな Agent2Agent(A2A)プロトコルを介して連携します。一方、Gemini Enterprise Agent Platform は、エンベディング、予測、グラフ学習のためのモデルをホストします。

しかし真のブレークスルーは、自律的な実行における迅速性と完全な透明性を両立させている「デュアルグラフ基盤」のプラットフォームです。このプラットフォームは、行動に最適化されたナレッジグラフと、記憶と学習を担うコンテキスト グラフという、意図的に役割を分離した 2 つの特殊なグラフシステムによって支えられています。

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ナレッジグラフ: エージェントをビジネスの実態にグラウンディング

Spanner Graph を活用した Yahoo のナレッジグラフは、収益化ビジネスの各要素を相互に関連付けられた運用モデルとして表すことで、エージェントのあらゆる意思決定をビジネスの実態にグラウンディングします。広告サービス、プレースメント、オーディエンス セグメント、広告枠、契約、ガバナンス管理は、それぞれファーストクラス エンティティとして、その相互関係とともにモデル化されます。重要なのは、ポリシーをアプリケーション ロジックに埋め込むのではなく、バージョン管理された関係としてグラフ内に直接組み込んでいることです。この設計により、商品、契約上の義務、同意に関する要件、規制上の制約を、単一の統合されたグラフ操作でまとめて評価することが可能になっています。

グラフは、エージェント プラットフォーム全体でセマンティック コントラクトとして機能します。キャンペーンの評価中、エージェントは 1 つのクエリプラン内で、バイヤーの初期要件から対象となるオーディエンスや管理ポリシーまでを横断的に参照できます。Gemini Enterprise Agent Platform のエンベディングは、セマンティック類似性によってこれらのエンティティの情報を拡充し、グラフ ニューラル ネットワークは推論された関係を提供します。これにより、エージェントは単に利用可能な広告枠を取得するだけでなく、広告枠選定の根拠を正確に把握したうえで、あらゆるガバナンス上の制約を確実に遵守できるようになります。

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Yahoo のナレッジグラフ オントロジー(IAB AdCOM などの業界標準に準拠)

コンテキスト グラフ: 監査可能なメモリの作成

エージェント規模での実行が安全なのは、完全な透明性が確保されている場合のみです。その透明性を確保することが、コンテキスト グラフの核となる役割です。Seller Agent がアクションを実行するたび、その正確な実行プロセスが BigQuery Agent Analytics プラグインによってキャプチャされます。システムは、未加工のイベントをログに記録するだけでなく、Yahoo の意思決定トレース オントロジーを活用した BigQuery Agent Analytics SDK を使用して、このエビデンスから型付きのクエリ可能なコンテキスト グラフを作成し、BigQuery Graph に格納します。

その結果、すべての意思決定ポイント、候補パッケージ、ポリシー評価、スペシャリスト エージェントへの委任、実行結果を相互に関連付けた、エビデンスのグラフが出来上がります。このトレースは型付きグラフとして構造化されているため、エージェントの意思決定プロセスを簡単なクエリによって説明することができます。監査人は、元のキャンペーンの概要、割り当てられたすべてのスコア、適用されたポリシーなどの意思決定までのプロセスを即座にトレースできます。これにより、自律的な動作が「不透明なプロセス」から「完全に透明で継続的に改善される意思決定記録」に変わり、絶対的な説明責任を確保するのに役立ちます。

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Yahoo のコンテキスト グラフ オントロジー

人間ができる範囲からエージェントならではの規模へ

このアーキテクチャが実際にどのように機能するのか、具体例として広告キャンペーンの実施を考えてみましょう。従来は計画、販売、運用、コンプライアンスの各部門で数週間を要していた調整作業を、2 つのプロセスを同時進行させることで数秒で完了できるようになっています。

ナレッジグラフに基づくアクションの実行: このパイプラインでは、バイヤーのリクエストからナレッジグラフに基づくキャンペーンの公開まで、直線的に予算を動かしていきます。このプロセスは、以下の 4 つのステップで構成されます。

  1. キャンペーンの概要の送信: バイヤー エージェントは、対象オーディエンス、予算、地域、ビジネス目標を記述したキャンペーン概要を Ad Context Protocol(AdCP)を介して送信します。

  2. ナレッジの検索: Seller Agent は、ナレッジグラフに対してクエリを実行し、関連する広告枠、オーディエンス、契約上の利用可能性、過去のパフォーマンス、管理ポリシーを特定します。

  3. 評価とスコアリング: エージェントはこれらの要素を総合的に評価して、メディア購入候補のパッケージを組み立てます。予測モデルが各機会をスコアリングする一方で、ガバナンス エージェントが同意、ブランド保護、規制上の制約を個別に確認します。

  4. 承認と実行: パッケージは、ポリシーのしきい値に基づいて自動的に承認されるか、人間による審査のためにエスカレーションされます。承認されるとメディア購入が実行され、配信が開始されます。

コンテキスト グラフを使用した監査と学習。実行パイプラインが進行する一方で、この並列ループはシステムの推論プロセスをコンテキスト グラフに継続的に記録します。これにより、透明性が確保され、将来のサイクルの改善が可能になります。この監査と学習プロセスには、次の機能があります。

  1. 継続的なキャプチャ: 検討されたすべての候補、割り当てられたスコア、適用されたポリシー、ガバナンスの意思決定は、紐付けられた記録としてコンテキスト グラフ内で元のキャンペーン セッションにリンクされます。

  2. クローズドループ学習: 配信、アトリビューション、成果のシグナルが届くと、それらが生成元の意思決定に紐付けられ、将来の推奨事項を改善するためのトレーニング データが作成されます。

  3. 即時の説明可能性: 広告主が特定のパッケージが選択された理由や、成果に影響を及ぼしたポリシーについて質問すると、回答がコンテキスト グラフに保存され、1 回のクエリでアクセスできます。

これにより、ナレッジ、意思決定、ガバナンス、測定、学習が連携して機能するプラットフォームが実現し、自律的なメディア購入の説明可能性と監査可能性を確保しつつ、継続的な改善を図ることが可能になります。

あらゆる業種に適用できる設計

単なるアドバイザーとしての AI の時代は終わりを迎えつつあります。企業がいま求めているのは、複雑な複数ステップのワークフローを実行できる自律型エージェント、つまり「アクション システム」です。しかし、規制の厳しい業界では、意思決定の根拠を証明できない場合、AI がもたらすスピードがむしろリスクに変わってしまいます。自律的な実行の主な障壁となるのは、もはやインテリジェンスではなく、信頼性です。

Yahoo と Google Cloud が構築したアーキテクチャは、この問題を解決できる、幅広く適用可能なブループリントを提供します。デジタル メディアの購入におけるボトルネックを解消するために設計されたものではありますが、その基盤となるパターンは、金融取引からサプライ チェーンのロジスティクスまで、リスクの高い意思決定を管理するあらゆる業界に適用可能です。エージェントならではのスピードで運用しながら、人間による監督を維持していくために、企業は以下のような新しいアーキテクチャのベースラインを採用する必要があります。

  • ビジネスの実態に基づく意思決定: 確率モデルだけでエージェントを運用することはできません。ビジネス ロジック、有効な契約、コンプライアンス ルールを決定論的にマッピングするナレッジグラフによって、エージェントをグラウンディングする必要があります。

  • 監査可能なメモリの構築: 追跡できないものを管理することはできません。エージェントのすべてのアクションをコンテキスト グラフに記録し、クエリ可能な不変のレコードを作成して、意思決定の理由や却下された代替案を正確に把握できるようにする必要があります。

  • オープンな相互運用性の重視: 信頼には透明性が不可欠です。オープン プロトコルと来歴標準を基盤とすることで、エージェントの動作に関する、業界共通の監査可能な枠組みを確立できます。

基盤モデルがコモディティ化するにつれ、企業の競争優位性は変化してきています。長期的に優位性を守る鍵となるのは、デプロイする言語モデルではなく、自社独自のビジネス オペレーション グラフと、統制された履歴データです。同様に、エンタープライズ AI の未来は、単に動作できるシステムではなく、その動作を説明、管理し、責任を負うことができるシステムにあります。

使ってみる

信頼できるアクション システムを構築する準備はできましたか?まず、Spanner Graph を使用して、エージェント ワークフローをビジネスの実態にグラウンディングしましょう。次に、BigQuery Graph を使用して監査可能なメモリを構築すれば、クローズド ループ学習と、規制当局の要求に応じられるレベルの説明可能性を実現できます。BigQuery Agent Analytics プラグインSDK を使用して、これらの運用トレースのキャプチャと分析を今すぐ開始できます。最後に、Ad Context Protocol を確認して、Yahoo のエージェント プラットフォームを支えるオープン コミュニケーション標準をぜひ理解しておきましょう。

- Yahoo、エンジニアリング担当ディレクター、Mikul Bhatt 氏

- Google Cloud、シニア スタッフ ソフトウェア エンジニア、Bei Li

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