Built with BigQuery: サステナブルなサプライ チェーンの構築はデータ共有エコシステムから始まります。
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 24 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: この投稿は、Built with BigQuery を活用したパートナー様をご紹介するシリーズの一部です。
この文書を読んでいる間にも、フットボール競技場の約 5 倍の広さの森林が伐採によって世界中で失われます。数々の企業、コミュニティ、規制当局の懸念をよそに、森林伐採によって毎年数千万ヘクタールの森林が世界中で破壊され続けています。2022 年に欧州森林伐採防止法(European Union Deforestation Regulation: EUDR)が成立しました。この法令は、森林伐採から得られた原材料の輸入を禁止し、調達フットプリントの検証によってサプライ チェーン全体にこれまで以上の透明性を確立することを目的としています。現在では、サプライヤーから調達する原材料の調達先が認定済みであるだけではなく、その原材料が森林伐採フリーであることを検証する立証責任が、日用品の製造企業にも求められるようになっています。パーム油、カカオ、大豆、コーヒー、木材、ゴム、牛肉、皮革などの産品もこの対象になります。
ここで企業経営者に求められる重要な要件は、以下の活動に対処するデリジェンス プロセスの確立です。
サプライ チェーン マッピング: 調達フットプリントの初期段階を検証できるデータを生産者と取引業者から収集します。
リスク評価: 衛星画像とサプライ チェーン マッピングのデータを使用して、森林伐採による原材料であるかどうかを特定します。
リスク軽減: コンプライアンス違反の可能性として無視できないリスクがあれば、その軽減を図ります。
TraceMark は、Google Cloud を活用したサステナブルな調達モニタリング プラットフォームです。原材料調達におけるサステナビリティのコミットメントを実現できるよう、グローバル サプライ チェーンにおける優れた透明性を企業に提供することを目的としています。TraceMark によるパワフルな地球観測分析では、森林伐採、森林再生、温室効果ガスの排出量推定、土地利用の変化などを扱います。このような分析は、透明性と一貫性を備えて自動化されたサプライ チェーンデータ交換を容易にする高度なデータ共有エコシステムから得られます。この分析に基づいて、サプライ チェーン マッピングを最適化できます。
グローバル サプライ チェーンを運用している各企業は、その運用に対するリアルタイムの可視性をグローバルな規模で獲得することと、原材料の調達に関する正確な情報にアクセスすることに苦慮しています。また、EUDR で規定されている重要な要件のそれぞれには以下のような課題があります。
多くの場合、サプライ チェーン マッピングは限られた範囲で文書化されているにすぎず、それもサプライヤーによって異なり、一貫性に欠ける。
独立性のある検証をグローバル ネットワークの規模で実施できないことから、リスク評価が困難である。
サプライヤーの積極的な関与やリアルタイムの報告がなく、リスク軽減が遅れている。
現在、森林伐採フリーであることを表明する手段として認証を使用している多くの組織は、調達フットプリント レベルの検証活動に踏み込むことが必要になっています。グローバル サプライ チェーンにわたって製造元が森林伐採を正確にモニタリング、検証、報告できるようにするには、製造元がサプライヤーとの直接的な関係を通じて、そのサプライ チェーンのトレーサビリティを構築する必要があります。
しかし、組織とそのサプライヤーとの間に双方向の関係を実現することは、世界中のサステナブルな調達部門にとって大きな課題です。これには次のような障害があります。
サプライヤー データの共有方法と使用方法に対する管理の欠如
主要な指標の生成に使用するデータとアプローチの一貫性欠如
データの陳腐化につながる一括エクスポート
製造者とサプライヤーとの双方向対話を容易にする能力の不足
多数のサプライヤーと製造者にわたるデータ共有の自動化と規模の欠如
このような障害があることから、組織ではサプライ チェーンマップの効果的な構築が困難になり、多くの場合、独創的なトレーサビリティのアプローチを確立することが求められます。
TraceMark は今後のサステナブルなサプライ チェーン確立を目指して設計されています。そのようなサプライ チェーンでは、一貫性があって自動化され、管理された方法により、組織とサプライヤーとの間でデータをシームレスに共有できます。この方法によって、最終的に各種の障害を削減し、レポートの正確性と適時性の向上を図ることができます。また、トレーサビリティの最適化と、TraceMark プラットフォームにデータを保持することによるセキュリティの簡潔化も望めます。
Google Cloud と NGIS は、TraceMark を通じて Analytics Hub を活用し、グローバル組織がそのサプライヤーと初期段階の調達データを交換できるようにします。このデータ交換では、自動化され、管理されたデータ共有エコシステムを使用します。Analytics Hub は、原材料の調達におけるデータ共有エコシステムの利用を促進することにより、技術的な障害に対処します。このデータ交換プラットフォームは、堅牢なセキュリティとプライバシーのフレームワークにより、各種の境界にわたってあらゆる規模で、データと分析情報を組織が共有できるようにします。同時に、マーケットプレイスから得られた商用データセット、公開データセット、Google のデータセットを使用して、高度な分析を実施します。
TraceMark は、サプライヤーと運用者がサプライ チェーンのデータを共有できるように、Analytics Hub の他にカスタム ユーザー インターフェースを提供します。このインターフェースは、データを容易に、また安全に共有できるように、簡潔でシームレスなエンドツーエンドのエクスペリエンスを創造するように設計されています。


このエコシステムによるアプローチは、グローバル企業が森林伐採規制に対応できるようにするだけではなく、関係者に固有なデータのシームレスなインテグレーションにより、これまで以上に正確な排出量レポート作成へ展開するための基盤を提供します。現在、間接的な温室効果ガスの排出量を推定している組織では、調達先から入手した調達フットプリント データを活用することにより、このような評価の正確さと一貫性を引き上げることができます。
たとえば、サステナブルなサプライ チェーンに向けて以下のような各種規制の強化があります。
The Fashion Sustainability and Social Accountability Act(米国): ニューヨーク州で議案が提出され、これまでよりはるかに高い透明性と多くの報告をアパレル業界に求めています。
The French Climate and Resilience Law(フランス): 製品に必須の環境ラベリングを規定しています。
The German Supply Chain Due Diligence Act(ドイツ): サプライ チェーンにおける人権に関して拡張した新たな義務を企業に課しています。
TraceMark は、Analytics Hub を通じて、初期段階のサプライ チェーンのモニタリングとデータ共有エコシステムを世界的規模で提供します。また、サプライ チェーン マッピングを構築してそれを発展できる能力も提供します。TraceMark を使用することで、各種データソースを組み合わせ、サステナビリティ実現に向けた双方向のアプローチをとることができます。
TraceMark と Google Cloud の組み合わせにより、サプライヤーのネットワークにわたるサステナブルな調達の実務を深く理解でき、地域サプライヤー レベルでの運用に関して、信頼できる情報を世界中からリアルタイムで入手できます。Google が最近発行した 2023 年版環境報告書では、サプライ チェーン上で遭遇する森林、水循環、生物多様性について Unilever が総合的な見解を構築する際に Google が支援した様子を取り上げています。
Better together: TraceMark と BigQuery
TraceMark は、実際のところ、Google のテクノロジーのみで構築されています。Google Cloud のみを使用したソリューションであり、Earth Engine、BigQuery、Google マップが備える Google の次世代地理空間ツールを使用してグローバルなサステナビリティ モニタリングを実現します。このソリューションは、80 ペタバイトを超える衛星データを使用して、森林伐採、土地利用の変化、温室効果ガスの推定排出量などの各種データポイントを検出します。このデータポイントを使用して、組織はサステナビリティに対する自社の企業コミットメントについて報告できます。組織固有のサプライ チェーン上の各段階に対応する複数のデータソースを特定するには、地理空間機能の使用が要点となります。
NGIS は、Google Earth Engine と Google マップの他に類を見ない地理空間テクノロジーを使用しています。これにより、変化し続ける地球に関するペタバイト単位の観測データを駆使し、TraceMark を通じて初期段階の森林伐採分析を提供できます。

TraceMark は、原材料のモニタリングに必要なトレーサビリティと透明性を実現するために、Google データと AI Cloud for Supply Chain を通じて複数の汎用データモデルを実装しています。このデータ共有エコシステムは Google Analytics Hub で構築されており、複数の組織にわたってデータセットを効率的に、また安全に共有する機能と、工場からフットプリントに至るトレーサビリティを備えた複雑なサプライ チェーンを構築する機能を提供します。
最後に紹介する要素は Google Cloud Ready – Sustainability プログラムです。このイニシアチブは、サステナビリティに関する重要なコミットメントを掲げている組織を、温室効果ガス排出量の削減に効果的なデータリッチ ソリューションへ導きます。このプログラムは、TraceMark と他の Google Cloud パートナー ソリューションを前面に押し出し、世界中の企業と行政機関がそれぞれのサステナビリティ プログラムを推進する活動を支援してきました。
Tracemark を詳しく知るには、こちらのウェブサイトをご覧ください。
ISV とデータ プロバイダにとっての Built with BigQuery のメリット
Google は Built with BigQuery イニシアチブを通じ、テクノロジー、便利な専用のエンジニアリング サポート、市場開拓共同プログラムを簡単に利用できるようにすることで、NGIS のような企業が Google のデータクラウド上で革新的なアプリケーションを作成できるように支援しています。参加企業には以下のメリットがあります。
専任のエキスパートから、重要なユースケース、アーキテクチャ パターン、ベスト プラクティスに関するインサイトを得ることによって、プロダクトの設計とアーキテクチャの構築を加速できます。
共同マーケティング プログラムを利用して、認知度の向上、需要の創出、導入の拡大を図り、より大きな成功を実現できます。
BigQuery は、Google Cloud のオープンかつ安全でサステナブルなプラットフォームに統合された、パワフルでスケーラビリティの高いデータ ウェアハウスのメリットを ISV に提供します。Google が提供する巨大なパートナー エコシステムと、マルチクラウド、オープンソース ツール、API のサポートを利用すれば、テクノロジー企業は、データ ロックインを回避するために必要な移植性と拡張性を得ることができます。
Built with BigQuery の詳細については、こちらをクリックしてください。
- TraceMark 担当プロダクト オーナー Sarah Coster
- Google Cloud、Built with BigQuery 担当責任者 Tom Cannon