Malachyte がマネージド リアルタイム AI で小売業のコールド スタート問題を解決した方法

Sidd Motwani
CEO, Malachyte
Vicki Boykis
Staff Machine Learning Engineer, Malachyte
※この投稿は米国時間 2026 年 8 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
未知の潜在顧客に商品をすすめるには、どのような方法が最適なのでしょうか。
私たちは、Spotify や Priceline などの大手企業とともに、長年この問題の解決に取り組んできました。そして、Sidd Motwani を中心に、AI を活用した e コマースのレコメンデーション プラットフォーム Malachyte を創設したのも、まさにこの問題を解決するためでした。最近では、消費者はパーソナライズされて関連性の高いコンテンツを期待するようになり、オンライン サービスは消費者の関心を集めるために競わねばならず、その結果がビジネスの成否を左右するまでになっています。
Malachyte は、高度な AI モデル、特に大規模言語モデルを、パーソナライズやレコメンデーションといった従来の課題に新しい方法で適用する独自のインサイトを見い出し、それが革新を生むきっかけとなりました。
さらに、潜在顧客の獲得を目指すうえで、Malachyte が常に思い描いていたビジョンを実現し、パーソナライズ アルゴリズムを構築し続けるには、セキュアかつスケーラブルで信頼性が高く、何よりも最先端の AI インフラストラクチャが必要でした。そこで、Bigtable や Managed Service for Apache Kafka などの Google Cloud ツールを活用することで、Malachyte は小売業者の売上を 2 倍、場合によっては 3 倍に増やすことに成功したのです。
ここでは、Malachyte がそのプラットフォームをいかにして構築したか、そして、企業家の皆様がこのようなサービスを利用して AI 基盤モデルのデプロイを新しい方法で開始するにはどうすればよいか、ご紹介します。
Malachyte はお客様の売り上げをどのように伸ばしたのか
Malachyte には、アテンション メカニズムを備えたニューラル ネットワーク(大規模言語モデルを支えるのと同じコンセプト)を使用して、小売検索と商品ページをパーソナライズできることを発見したときがひらめきの瞬間でした。このアプローチは、大規模言語モデル(LLM)でシーケンス内のアイテムの相対的な順序から意味を引き出すために使用されています。この場合、シーケンスは文中の単語と音節の順序です。Malachyte は、これを小売業のウェブサイトやアプリに応用し、顧客がサイトを操作する際の一連の行動の把握に努めました。


LLM が文の次の単語を予測するように、e コマースサイトでユーザーが次に何を求めているかを予測できたらどうでしょうか。
GPT 以前の言語モデルでも、単語や単語の断片(現在ではトークンとして知られているもの)の特定の並びを調べることは可能でした。しかし、それらの初期のモデルでは、単語が同等の順序で並んでいても、連続していなかったり、並べ替えられていたりした場合にどうなるかを調べることはできませんでした。この状況が打破されたのは、LLM がアイテムのシーケンス内の複雑で広い範囲の依存関係を理解できるようになったときでした。これには、Google の Transformer に関する取り組みも部分的に貢献しています。
このより洗練された手法は、生成 AI の一般的な普及はもちろん、Malachyte によるこのテクノロジーの応用という点でも、劇的な成果をもたらしました。
これを実践で機能させるために、Malachyte はユーザーがサイトにアクセスしたときに、そのユーザーについて知り得るすべての情報をベクトル化しています。ほとんどのユーザーは初めてサイトを訪れるため、ユーザーに関する情報はほぼありません。これが、いわゆる「コールド スタート」問題です。これに対応するには、ユーザーとのあらゆるやり取りをすべて活用して、このベクトルを改良する必要があります。たとえば、クリックやクエリなど、ベクトルに新しい要素が追加されるたびに、ユーザーが次に何を求めているかの予測が促進され、ユーザーに関する情報がさらに提供されます。
Malachyte のプラットフォームでは、その際にユーザー ベクトルと予測を同時に更新します。これにより、個々のユーザーとその好みをより深く理解できるだけでなく、匿名化されたユーザーデータを使用してモデル全体を改善することができます。推論を行うたびに、平均的な買い物客と特定の買い物客の両方のコンテキストが拡大する仕組みです。
Malachyte は、アテンションベースのニューラル ネットワークを使用するだけでなく、ユーザー プロファイルを 100 ミリ秒ごとに更新することで、さらなるイノベーションを実現しています。


Malachyte のレコメンデーション エージェントと検索エージェントは、ユーザーが前のページでクリックした内容に基づいて、次のページの検索結果やレコメンデーション カルーセルにデータを入力します。
正確には、このコンセプト自体は新しいものではありません。小売業者は長年にわたり、コラボレーション フィルタリング レコメンデーション システムを使用して、類似するユーザーとアイテムを特定してきました。ただし、これには膨大な量のインタラクション履歴が必要でした。これらのモデルでは通常、サードパーティ Cookie ベースのプロファイルやユーザー属性など、大量のデータを必要とします。
しかし、セッション内のインタラクションのシーケンスに焦点を当てることで、小売業者はユーザーのプロファイルのみに焦点を当てるよりも、必要なデータや費用を抑えながら、はるかに多くのパーソナライズを実現できるようになります。また、長期的な Cookie データに依存しないことで、ユーザーのプライバシーをより尊重できる利点もあります。
これは、モデルの構造と、ブラウザデータ、クリック履歴、検索など、ユーザーに関するあらゆる情報をエンコードするマルチモーダル ベクトルによって実現されます。出力もマルチモーダルです。同じモデルを、サイト内検索の商品ページ、カテゴリページ、「カートに追加」カルーセルに適用できます。
この仕組みは、カタログ内の各商品がユーザー ベクトルと同じ空間に埋め込まれることで機能します。それにより、ユーザー ベクトルが更新されて、関連する商品に近づき、関連しない商品からは遠ざかるようになります。エンベディングを計算するニューラル ネットワークは、Malachyte と連携する小売業者全体で継続的にトレーニングされ、すべてのユーザーの品質を向上させています。このシステムは事実上、データ協同組合として機能し、各小売業者のユーザーがモデルをさらにスマート化させながら、それが全ユーザーに役立つ仕組みになっています。


商品の空間でベクトルとして表されるユーザー セッション。
この仕組みをすべてのユーザーに対して推論ごとに 100 ミリ秒で実現するために、Malachyte は Google Cloud のリアルタイム AI スタックを基盤とすることに大きなメリットを見出しました。
このシステムでは、すべての行動イベントが Managed Service for Apache Kafka クラスタにストリーミングされます。各イベントは、将来のトレーニング ジョブのためにキューに入れられるのではなく、Bigtable で直ちにユーザー プロファイルの更新に使用されます。Kafka クラスタにより、お客様のフロントエンドが永続化されるため、ユーザー セッションのシグナルをユーザー ベクトルにどのように適合させるかをあまり心配することなく、迅速に処理できます。
Bigtable によって、Malachyte のサービスは適切なユーザー ベクトルを検索して更新できるようになります。Bigtable と Kafka はステップごとに 10 ミリ秒のオーダーで動作するため、レコメンデーション ループ全体が、ユーザー エクスペリエンスを中断することなく完了します。


小売業者のウェブサイト、Malachyte の AI モデルとサービング フロントエンド、コンテキスト管理インフラストラクチャから成る 3 層のリアルタイム AI アーキテクチャ。
高速コアの機能に加え、商品カタログの更新事項、在庫シグナル、小売店固有のディメンション データから成る第 2 レイヤには、商品データを最新の状態に保つ働きがあります。このデータは Cloud Pub/Sub 経由で送信されます。Cloud Pub/Sub は、グローバル アクセスが可能な REST API を提供するため、小売業者は緻密な統合作業なしで接続を利用できます。Malachyte エージェントは Google Kubernetes Engine (GKE)で実行され、モデル推論は Google Compute Engine(GCE)で行われます。


商品カタログの更新事項などの外部データの継続的な取り込みは、Pub/Sub のグローバル メッセージング システムを通じて行われます。
Google Cloud AI アーキテクチャに移行したことで、Malachyte は本番環境の AI 推論とトレーニングが GPU とストレージだけでは決まらないことを実証しました。高速な Key-Value ストア、ストリーミング レイヤ、マネージド メッセージング システムを含むリアルタイムの継続的学習インフラストラクチャが必要であり、これらすべてが基盤モデル アーキテクチャと統合されていることが重要です。
このアプローチは、Malachyte のような小規模なチームでも業界に多大な影響を与えることができることを示しています。必要なのは、強力なインフラストラクチャとコア AI マネージド サービスへのアクセスです。
使ってみる
Malachyte のように業界に革新をもたらしたり、他社に先駆けて業界をリードしたりすることを目指すなら、Managed Service for Apache Kafka、Cloud Pub/Sub、Bigtable をお試しください。新規のお客様は、$300 分の Google Cloud クレジットを利用できます。
- Malachyte、CEO、Sidd Motwani 氏
Malachyte、スタッフ ML エンジニア、Vicki Boykis 氏

