エージェント型開発の未来: Data Agent Kit でデータ実務担当者のライフサイクルを再定義
Brahm Kohli
Group Product Manager, Data Cloud
Dinesh Chandnani
Director of Engineering, Data Cloud
※この投稿は米国時間 2026 年 5 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
現代のソフトウェア開発は、単一の場所で完結するものではなく、エージェント型ツールのエコシステム全体に広がっています。エージェントはかつてない規模で開発されており、コンテキストとグラウンディングのために、企業データに直接アクセスする必要があります。
しかし、エージェントの構築やデータ管理に使用される現在のツールは大きく断片化されています。そのため、データへのアクセスが難しくなり、セキュリティ リスクが高まるだけでなく、開発者体験が損なわれ、イノベーションの妨げになる可能性があります。
この課題に対処するため、Google は最近、Data Agent Kit をリリースしました。これは、データ エンジニアリングとデータ サイエンスのスキル、ツール、プラグインをまとめた統合型のオープンソース コレクションです。VS Code、Claude Code、Codex、Gemini CLI、Antigravity CLI など、実務担当者がすでに使用している環境に直接統合できます。こうした中核的なツールやスキルを企業データとシームレスに結び付けることで、Data Agent Kit は、エージェントに必要なコンテキスト、メモリ、パーソナライズを支える包括的な基盤として機能します。Data Agent Kit には、以下が含まれます。
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エージェント型スキル: クエリ最適化、ML のベスト プラクティス、データ検証、データドリフト チェック、ガバナンス、トラブルシューティングなど、データ資産とやり取りするためのあらかじめコード化された手順。
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Model Context Protocol(MCP)ツール: エージェント型ワークフローと、BigQuery、AlloyDB、Google Cloud Storage などのクラウド データ プラットフォームを安全に接続するツール。デベロッパーは、複雑な手動のパイプライン コードを管理しなくても、クラウド データセットやデータ処理エンジンの接続パラメータを構成できるようになります。
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プラグインと拡張機能: コンテキストを踏まえた高度な開発者体験を可能にするネイティブ IDE 統合。
これらの Data Agent Kit の機能を組み合わせることで、データ実務担当者は、手作業でコードを記述する従来の作業から、インテント ドリブンなデータ サイエンスとエンジニアリングへと移行できます。つまり、実現したいビジネス成果、制約、成功基準を定義すれば、AI で強化されたシステムがその実行方法を判断できるようになります。この変化は非常に重要です。現在、複雑なデータ アーキテクチャを扱うエージェント型アプリケーションを構築する際には、多くの場合「コンテキスト ウィンドウ税」とも言える負担が発生します。つまり、デベロッパーは膨大な量のスキーマ メタデータを手作業でプロンプトに貼り付ける必要があり、トークン上限を消費し、レイテンシも増加します。一方で、データ実務担当者は、クラウドデータを効率的にクエリ、最適化、トラブルシューティングする方法について十分なガイダンスを得られないことが多く、専門化され断片化した開発環境では、データ資産全体を見渡すことができません。Data Agent Kit は、こうした課題をはじめとするさまざまな問題に対応し、データ実務担当者が新しいエージェント型の働き方に移行するために必要な基盤機能を提供します。
Data Agent Kit の機能とメリット、インストール方法、ローカル環境をデータ資産に接続する方法、インテント ドリブン エンジニアリングの例について、以下で詳しく説明します。
データ資産とライフサイクルを統合するハブ
Data Agent Kit を使用すると、データ資産全体を 1 つのビューで利用できるようになります。これは、BigQuery、AlloyDB、Spanner などのデータベース向けに単純なカタログを提供するだけのものではありません。データ エンジニアリングとデータ サイエンスのタスク、オーケストレーション パイプライン、ジョブを単一のインターフェースに統合します。これにより、実務担当者は、検出から本番環境への移行まで、データ ワークフロー全体をコンテキストを切り替えることなく管理できます。Data Agent Kit のインテリジェントなルーティングは、タスクに最適なコンピューティング エンジンを自動的に選択します。たとえば、SQL ネイティブな分析や ELT には BigQuery、カスタムの Python 変換や分散 ML トレーニングには Spark を選択できます。


データ資産とライフサイクルを統合するハブ
エコシステム主導のインテリジェンス: 体系化されたエージェント型スキル
Data Agent Kit は、Google Cloud のデータ エンジニアリングとデータ サイエンスの専門知識に基づき、事前定義されたエージェント型スキル(ML のベスト プラクティス、ELT、データアプリの構築など)のライブラリを提供します。汎用的な LLM プロンプトに頼るのではなく、規範的なガイドラインをワークフローに組み込みます。これにより、エンタープライズ グレードのデータ インテリジェンスを IDE や CLI に直接取り込むことができます。


事前定義されたデータ エンジニアリングおよびデータ サイエンスのエージェント型スキル一覧を確認する


Data Agent Kit では、会話型分析を使用してデータを探索できます。
実践的なチュートリアル: データの統合とモデルの構築
Data Agent Kit のスキルと MCP ツールがどのように連携するのかを確認するために、金融サービスのシナリオを考えてみましょう。ある企業で不正請求が増加しているとします。Cloud Storage に保存されたトランザクション データを使用して、信頼性の高い不正検出モデルを構築し、オーケストレーション パイプラインをスケジュールする必要があります。従来であれば、複数のコンソールをまたいで何時間もデータ ラングリングを行う必要がありました。Data Agent Kit を使用すれば、この作業を IDE や CLI 内で直接、数分で完了できます。では、その方法を見ていきましょう。
オンボーディング: 1 分でセットアップ
統合されたセットアップ プロセスにより、Data Agent Kit は 1 分以内に使い始めることができます。
IDE のマーケットプレイス(VS Code)で「Google Cloud Data Agent Kit」を検索するか、後述の「使ってみる」セクションにあるリンクから CLI(Gemini、Antigravity、Claude、Codex)向けの GitHub リポジトリにアクセスします。Data Agent Kit は依存関係を自動的に構成し、Google Cloud へのログイン ステータスを確認します。


アクティビティ バーの Google Cloud アイコンをクリックし、IAM 経由で認証します。ログインすると、Cloud Storage、データベース、カタログ アセットがワークスペースにすぐに表示されます。
設定メニューを使用してプロジェクト ID とリージョンを設定し、MCP のステータスを確認して、すべてのバックエンド サービスに必要な権限が付与されていることを確認します。Data Agent Kit には、ツールとスキルの使用方法を説明するクイックスタート ガイドも含まれています。


インテント ドリブンなデータ エンジニアリングの例
Data Agent Kit をインストールすると、手動による ETL の定型作業を省き、コーディング アシスタント(Claude Code、GitHub Copilot など)に自然言語で大まかな目標を直接伝えることができます。アシスタントは Data Agent Kit のスキルを活用して、ワークフローを計画し、実行します。
プロンプト:
未加工のトランザクション ログが GCS バケット gs://fin-clearing-raw/ に保存されています。
まず、Spark ノートブックを作成し、(1)これらのログを BigQuery の Iceberg テーブルに取り込みます。
次に、dbt プロジェクトを作成して、(2)重複を除去し、(3)無効なトランザクション ID を持つトランザクションを削除して別の Iceberg テーブルに保存し、(4)タイムスタンプを標準化して、その他の必要なクリーンアップ タスクを実行し、(5)出力を別の Iceberg テーブルに同期し、(6)この出力テーブルを、支払い者と受取人の ID を含むテーブルと結合して、最終的な Iceberg テーブルに書き込みます。
3 つ目として、ノートブックを使用して Spark で ML モデルをトレーニングし、出力テーブル内の不正なトランザクションを検出したいと考えています。LightGBM モデルを検討していますが、他に提案があればそれも検討します。プロジェクト内の関連データセットを使用してください。
最後に、上述のパイプラインに Spark ノートブックを使用した推論ステップを作成し、バッチ推論を実行して、フラグが付けられたトランザクションを Spanner テーブルに書き込んでください。
まず取り込みを実行し、次に dbt、最後に推論ノートブックを実行するオーケストレーション パイプラインを作成してください。
内部の仕組み: データ パイプラインの手順
Data Agent Kit は、探索から推論まで、データ ライフサイクル全体にわたる堅牢な複数ステップのオーケストレーションを背後で計画します。
ステップ 1: ノートブックの作成、取り込み、初期保存
ブロンズデータ、つまり金融取引に関する未加工でフィルタされていないデータを見つけ、変換を行う前に Iceberg テーブルに取り込みます。
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Cloud Storage から未加工のログを取り込むためのノートブックを自動的に作成します。
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必要な SQL を記述し、取り込んだデータを BigQuery の Iceberg テーブルに保存します。


Ingestion into a bronze table
ステップ 2: 変換(dbt プロジェクト)
次に、ブロンズデータをクリーニングし、シルバー テーブルとゴールド テーブルに変換します。
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データの準備: トランザクション ログの重複を除去します。
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無効な ID のフィルタリング: 無効な ID を持つトランザクションを特定し、別の Iceberg テーブルに保存します。
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クリーンアップと標準化: タイムスタンプを標準化し、その他の必要なクリーンアップ タスクを実行します。
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同期: BigQuery MCP サーバーを活用して、クリーニング済みのデータを別の Iceberg テーブルに出力します。
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エンリッチメント: クリーニング済みのテーブルを、支払い者と受取人の ID 情報を含むテーブルと結合します。
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最終出力: 結合したデータセットを最終的な Iceberg テーブルに書き込みます。


シルバー テーブルとゴールド テーブルを作成するためのデータ変換
ステップ 3: ML と推論
ゴールド テーブルができあがったら、次はデータ サイエンス、つまりモデルのトレーニングと推論に進みます。ここでは、エージェントが前のステップでクリーンアップしたデータをモデルに渡し、不正のパターンを検出します。
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トレーニング: Spark ノートブックを使用して ML モデルをトレーニングします。
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推論: バッチ処理用の Spark ノートブック推論ステップを作成します。
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保存: Spanner MCP を活用して、フラグが付けられた不正なトランザクションをすべて Spanner テーブルに書き込みます。


ML と推論
ステップ 4: オーケストレーションと実行
最後に、本番環境への移行に向けて、取り込み → 変換 → 推論というオーケストレーション パイプライン全体をスケジュールします。


オーケストレーション パイプラインと実行スケジュール
予期せぬ問題が発生した場合: エージェント型インシデント管理とインテリジェントな復旧
オーケストレーション パイプラインが失敗しても心配はいりません。Data Agent Kit は、インテリジェントなインシデント管理機能を使用して、解決までのプロセスを効率化します。
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インテリジェントな診断: 根本原因分析を自動的に実施し、障害の発生源を特定します。
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自律的な修復: 手動デバッグを介さずに、修正案を作成してテストします。
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自動復旧: 自動化された Git ワークフローを通じて修正を検証し、デプロイします。


問題の診断と修復
これで、元データの探索から、完全に自動化された不正検出の仕組みの構築まで、同じ UX 内でわずか数分のうちに完了できます。複数のブラウザタブや IDE インターフェースを行き来したり、データ エンジニアリングやデータ サイエンスのベスト プラクティスを一から学んだりする必要はありません。Data Agent Kit は、さまざまな MCP ツールと体系化されたスキルを活用し、クリーンなエンドツーエンドのフローをオーケストレートします。最終的に、このアプローチにより、最も重要なこと、つまり革新的で高性能なデータ アプリケーションを大規模に提供することに集中できます。
使ってみる
Data Agent Kit は、このたびプレビュー版の提供を開始いたしました。まずは、お好みの IDE または CLI にインストールしてください。
詳細を確認して使い始めるには、ドキュメントをご覧ください。
- データクラウド担当グループ プロダクト マネージャー、Brahm Kohli
- データクラウド担当エンジニアリング ディレクター、Dinesh Chandnani



