コンテンツに移動
アプリケーション モダナイゼーション

SaaS デリバリーを簡単に: SaaS ランタイム

2025年5月2日
Vidya Nagarajan Raman

Director of Product Management

※この投稿は米国時間 2025 年 4 月 24 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

Software as a Service(SaaS)ベースのソリューションは、AI を活用した高度なパーソナライズ、業種別ソリューションの増加、ノーコード革命といった要因が追い風となり、急速に需要が高まっています。しかし、これから SaaS プロバイダを目指そうにも、SaaS の構築やスケーリングを成功させようと思うと、怖気づいてしまうのではないでしょうか。課題としては、パーソナライズされたエクスペリエンスの作成が難しいことや、数千におよぶインスタンスの管理が複雑であること、多様なインフラストラクチャに対処しながらパフォーマンスと信頼性の目標を満たす必要があることなどが挙げられます。このような運用上の負担が障壁となり、イノベーションや、優れたカスタマー エクスペリエンスの提供という、本来の目的がおろそかになる恐れもあります。

Google Cloud Next 25 で、Google は SaaS ランタイムのプレビュー版を発表しました。これは、フルマネージドの Google Cloud サービス管理プラットフォームであり、SaaS プロバイダが複雑なインフラストラクチャ運用を簡素化および自動化し、コアビジネスに集中できるようにするものです。SaaS ランタイムは、Google が社内で複数テナントの多数ユーザー向けに使用しているプラットフォームに基づいており、大規模にサービスを管理してきた豊富な経験が活かされています。SaaS ランタイムは、自動化を中心に、大規模な管理を実現する豊富なツールセットを備えており、SaaS 環境のモデル化、デプロイの迅速化、運用の合理化に役立ちます。

SaaS ランタイムの目標は、ソフトウェア プロバイダを以下の点で支援することです。

  • 迅速なリリース、カスタマイズ、イテレーション: SaaS ランタイムは、カスタマイズ可能なビルド済みブループリントを提供するため、迅速なイテレーションとデプロイに役立ちます。シンプルなデータモデル抽象化によって、AI アーキテクチャのブループリントを既存のシステムに簡単に統合することが可能となります。

  • 運用の自動化、テナントのモニタリングおよびスケーリング: SaaS ランタイムはフルマネージド サービスであり、大規模な自動化を実現できます。まず、現在の継続的インテグレーション / 継続的デリバリー(CI / CD)パイプラインから始めて、SaaS ランタイムにオンボーディングし、スケーリングして、クラウドとエッジの両環境でサービス管理、テナントのモニタリング、運用を簡素化できます。

  • 迅速な統合、最適化、拡張: SaaS ランタイムは Google Cloud エコシステムに密接に統合されています。デベロッパーは、新しい Application Design Center でアプリケーションを設計し、Google Cloud Marketplace で提供できます。さらに、アプリケーションをテナントにデプロイした後は、Cloud ObservabilityApp Hub でパフォーマンスをモニタリングできます。この統合アプローチにより、デベロッパーには、ビジネスの詳細情報で拡充されたアプリケーション層の統合ビューが提供され、迅速な統合、最適化、スケーリングを行うことが可能となります。

SaaS ランタイムの仕組み: モデル化、デプロイ、運用

SaaS ランタイムは、モデル化、デプロイ、運用という 3 つのステップで構成される合理化されたプロセスを通じて、SaaS のライフサイクル管理を簡素化します。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1a_HbKjKn5.max-900x900.jpg

たとえば、あなたは SaaS プロバイダで、小売業者が在庫を最適化し、需要を予測し、各店舗の廃棄物を削減できるように、在庫管理アプリケーション(IMS)を SaaS として提供するとします。また、料金階層を設定する、AI 機能でアプリケーションを拡張することも検討しています。Google Cloud でこれを実現する方法を見てみましょう。

1. モデル

SaaS プロバイダとして、まず SaaS ランタイムの推奨データモデルを使用して SaaS アーキテクチャを定義またはインポートします。SaaS ランタイムをスケーリングに利用したい場合は、SaaS ランタイムの推奨モデル フレームワークに基づき、自社のアーキテクチャを再利用することが可能です。具体的には、デプロイとアップデートを一緒に行うコンポーネントをパッケージ化し、複数の異なるブループリントを作成できます。この構造化されたアプローチは、アプリケーションとインフラストラクチャの複雑さを抽象化するため、パフォーマンスと信頼性が高まるように最適化できます。

まず、一般的なソース リポジトリ(GitHub、GitLab、Bitbucket など)を通じて Terraform モジュールをインポートし、ブループリントを作成します。これらのブループリントは SaaS プロダクトの構成要素として機能し、数千のテナント インスタンスに簡単にスケーリングできます。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/2_Au3Fb60.max-1600x1600.png

在庫管理 SaaS のシナリオでは、独立したデプロイと迅速なイテレーションを実現するために、基本インフラストラクチャ ブループリント依存 IMS アプリケーション ブループリントという 2 つのブループリントの階層構造を使用します。この例では 2 つのブループリントを使用していますが、SaaS ランタイムのブループリント モデルは自由にコンポーズ可能であり、グループ化や依存関係を柔軟にカスタマイズできるため、信頼性を主眼としてさまざまなビジネス目標を達成できます。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/3_pTxkeLM.max-2000x2000.png

2. デプロイ

SaaS ランタイムは、ブループリントのプロビジョニングとオーケストレーションを自動化し、一貫性と信頼性を確保します。この在庫管理 SaaS のデプロイ用に、基本ブループリントおよび IMS ブループリントに対応する 2 つのリリースが作成されます。

続けて、作成されたリリースを使用し、各小売業者に応じたパーソナライズを行ったうえで、それぞれの在庫管理 SaaS インスタンス(テナント インスタンス)をプロビジョニングできます。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/4_tkspK4A.max-2000x2000.png

3. 運用

SaaS ランタイムの包括的なサービス管理ツールを使って、SaaS 運用を管理、モニタリング、最適化できます。具体的には、以下のことができます。

  • 既存のリリースを大規模にロールアウトする: 基本および IMS のリリースをすべての小売業者にロールアウトするには、ロールアウト機能を使用します。リリースを一度に 1 つずつ選択し、すべてのテナントに一度にロールアウトできます。または、一度に 1 つのリージョンにロールアウトして、安全性および信頼性を確保することもできます。

  • 新リリースをロールアウトする: 在庫管理 SaaS アプリケーションに動的料金最適化などの新しい AI 機能を追加したアップデート版をロールアウトするには、IMS ブループリントに依存する新しい AI ブループリントを作成します。新リリースを作成し、すべてまたは一部の小売業者テナントにロールアウトします。
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/5_Bs1x1KP.max-1700x1700.png
  • フィーチャー トグル構成を使って新機能をロールアウトする: 一部の小売業者テナントにのみ、プロモーション価格調整などの新機能をロールアウトするには、SaaS ランタイムのフィーチャー トグル 機能を使用します。この機能を有効にするには、PromoPricing フラグを true に変更するだけでよく、新しいバイナリ アップデートをロールアウトする必要はありません。
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/6_5LaYVWw.max-2000x2000.png
  • ロールアウトとデプロイの進行状況をプロアクティブにモニタリング、制御する: 少数の SaaS インスタンスでロールアウトのドライランを行い、すべてのテナントにロールアウトする前に機能と信頼性を検証することもできます。また、すべてのリージョンとテナントでのロールアウトの進捗状況をモニタリングすることもできます。ロールアウト中に問題が発生した場合は、いつでも一時停止や再開ができます。また、ロールアウトをキャンセルしたり、ロールバックしたり、いったん保留にして延期したりすることも可能です。
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/7_PR2FWRh.max-1800x1800.png

使ってみる

SaaS ランタイムを使用すると、ソフトウェア プロバイダは SaaS サービスのイノベーションとスケーリングを迅速に実現できます。たとえば、在庫管理アプリケーションの例で示したように、合理的な 3 段階プロセスを使用するスマートな SaaS を構築できます。SaaS ランタイムでは、コンポーズ可能なブループリント モデルによって、レイヤごとに独立して開発を行い、迅速にイテレーションを行えます。これらのブループリントをデプロイするという方法によって、個々のテナントに応じてエクスペリエンスをカスタマイズすることが可能となります。さらに、SaaS ランタイムを使うことで、複雑な運用を大幅に簡素化し、多様なテナント グループに対するバージョンおよび機能のロールアウトをきめ細かく制御することができます。

Google Cloud の SaaS ランタイムは現在プレビュー版が提供されており、これを使って SaaS 管理を簡素化および自動化できます。Google Cloud Next 25 のプレゼンテーションの録画をご覧ください。

プロダクト ページにアクセスして詳細をご覧になるか、Cloud コンソールでさっそく使用を開始して、今すぐ SaaS の革新を始めましょう。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/8_N3L6lWE.max-1200x1200.png

-プロダクト管理担当ディレクター、Vidya Nagarajan Raman

投稿先