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AI & 機械学習

担保への IT の活用: Google Cloud による HSBC の資産配分の最適化

2023年1月11日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 12 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

最適化の問題をご存知ですか?たとえば、サイズ、色、模様、重量が異なる 100 万個のビー玉があるとします。さまざまなサイズの 1,000 個の容器にビー玉を詰める必要がありますが、容器ごとに入れられるビー玉の色、模様、数に制限があります。すべての容器をいっぱいにした後で残ったビー玉は自分のものになるため、最も美しいビー玉を残したいと思うでしょう。この難題を解決するにはどうすればよいでしょうか?さまざまな可能性がありますが、考え得る限り最高の成果を毎回確実に手にするための最も効率的な方法は何でしょうか?

HSBC の担保資産デスクと担保管理チームは似たような問題を解決してきました。ただし、対象はビー玉と容器ではなく、担保権を設定できる約 50,000 の資産と数千の担保口座です。

担保資産取引デスクは、クライアントに対する債務を担保するために必要な担保権を特定の債権や株式などに設定することで、当行のマーケット部門の資金調達を支援しています。この担保は、HSBC が委託保証金、CCP(中央清算機関)、または証券金融取引に使用できるものです。各クライアントについて、どの資産に担保権を設定できるかに関する適格基準は、債務によってそれぞれ異なります。これらのルールと制限の中心にあるのは、許可される資産のタイプや日々の流動性要因です。

担保と債務を組み合わせるプロセスは「配分」と呼ばれ、担保プールが多様になるほど、また顧客の数が多いほど複雑化します。担保を最も効率的に配分することが重要であり、従来はこのビジネス課題を一連のシンプルなルールに照らして手動で、またはサードパーティに依頼して管理していました。

しかし、Google Cloud と提携したことで、自動化によって担保配分を改善できるようになりました。管理対象の担保目録の総額が数百億ドルである場合、わずかな効率向上でも大きな違いを生む可能性があります。つまり、資金調達費用や、流動性カバレッジ比率などの規制比率を管理する際の担保資産デスクの効率が大きく向上することになります(流動性カバレッジ比率とは、流動性ストレスの期間を耐えられるだけの質の高い十分な資産をすぐに用意できることを保証する、銀行の主要な財務リソース指標です)。

AI を活用した複雑なビジネス課題への対処

当行が導入した OPTIC というソリューションは、Google AI が提供するオープンソースの最適化ライブラリである Google Operation Research Tools(OR-Tools)を活用した HSBC プラットフォームです。その主な目標は、担保資産デスクが担保配分プロセスを、どの日付でも最も最適な方法で自動化できるようにすることです。OPTIC のアーキテクチャはマイクロサービスを基盤としており、スケーラブルなセルフマネージド インフラストラクチャが必要とされる大量のデータの処理機能を備えています。OPTIC は Google Kubernetes Engine で実行され、ワークロード リバランシング、自動スケーリング機能、高可用性を実現します。

さらに、Google のオペレーションズ リサーチ チームと連携したことで、当行のビジネス課題を解決するために Google の最適化ライブラリを実装する最適な方法に関する助言を経験豊富な Google AI エンジニアから得られました。  

担保目録の管理方法を根本的に変える最適化機能を実現するには、Google OR-Tools のような線形プログラミング ソルバーが最適な選択肢であることがわかりました。これにより複数の成果を上げられるよう最適化し、可能な限り最も効率的な方法を採用していると確信できます。

自動化による最適な方法の特定

OPTIC の仕組みを説明します。まず多数のシステムのデータフィードを消費し、データを標準化します。続けて Google OR-Tools が使用できる意思決定パラメータおよび重み付けと組み合わせ、最適な成果を把握し達成します。また、OPTIC は、担保配分をさらに効率的にするために今後どの資産を追加または削除できるかなど、ビジネス上の意思決定の最適化に役立つ分析情報や指標も提供できます。

このプロジェクトのおかげで、今後は Google Kubernetes Engine を使用して他のプラットフォームのマイクロサービスも管理できると前向きに考えています。言い換えると、ハードウェアについて懸念したり環境に大幅な変更を加えたりせずにスケールすることが可能になります。このソリューションを活用することで、独自の観点で評価した担保の価値と品質、ならびに任意の時点でのエクスポージャーに最適な選択肢に応じて、担保を調達し、最適化することができるでしょう。  

HSBC のマーケット部門が得られる長期的なメリットは、これから明らかになるでしょう。たとえば、運用リスクの低下や資金調達費用の大幅削減などが考えられます。今後も、新しい機能やデータソースを当行のソリューションに追加し、業界の複雑なビジネス課題を解決していく所存です。


- 担保資産、マーケット、証券サービス担当グローバル責任者 Jamie Anderson 氏
- 担保 IT、マーケット、証券サービス担当グローバル責任者 Paul Vickers 氏
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