【MWC Barcelona 2026】 Google Cloud が描く通信業界の未来:エージェント型 AI がネットワークも顧客体験も変える

Google Cloud Japan Team
スペインのバルセロナで開催中の世界最大級のモバイル展示会「Mobile World Congress(MWC) 2026」。Google Cloud はホール 2 に大きなブースを構え、「Agentic Telco(エージェント型 テレコミュニケーション)」をテーマに、AI が通信事業のあり方を変える新しい世界観を発信しました。現地から、熱気に包まれた会場の様子と、Google Cloud が発表した重要な技術やデモについてお届けします。
2026 年の AI エージェントのトレンドをまとめたレポートも公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。


MWC 内、Google Cloud のブース
通信業界に到来した「エージェント型 AI 元年」
これまで業界における AI の活用は、定型作業を効率化するツールの域を出ないことが多くありました。しかし今年の MWC では、AI が自律的に思考し、システム全体を横断して自らアクションを起こす「エージェント型 AI(Agentic AI)」への移行が明確に示されました。
Google Cloud は、独自のインフラストラクチャから Android や Pixel といったデバイスに至るまで、モバイルエコシステム全体をシームレスにつなぐことで通信企業を後押しします。ブース内には 12 の展示と 9 つのミーティングスペースが設けられ、キャリアの通信制限時にデータパックを自動購入するデモや、顧客からの問い合わせに対して裏側で ServiceNow のインシデントを自動発行して解決まで導くエージェントなど、AI が業務を自律的に遂行する未来を体感できます。


顧客からの問い合わせに対して裏側で ServiceNow のインシデントを自動発行
自律型ネットワークの運用:Autonomous Network Operations
通信事業者は、5G への投資を確実な収益へとつなげるため、人間の介入なしにネットワークが自らの問題を特定し、診断・修復する自律化を目指しています。Google Cloud は、昨年発表した Autonomous Network Operations フレームワークを本番環境へと進化させ、MWC でその成果を披露しました。
中核を担うのはネットワーク デジタルツインです。静的なマップだった従来の構成から、Cloud Spanner Graph を用いてネットワークの物理的・論理的な状態を動的なグラフとして表現し、リアルタイムのパフォーマンスと過去の履歴を高速に照会できるようになりました。さらに、Vertex AI でグラフ ニューラルネットワーク(GNN)を時系列で学習させることで、障害が広がる前に予防的な対応が可能になります。また、特定の障害対応タスクなどは、Agent が自動的に情報を収集します。原因特定や対応策のサジェストまで実行し、人がそのタスクの実行結果を承認するといった、Agent 含めたオペレーションが確立されつつあります。


ネットワークの物理的・論理的な状態を動的なグラフ
通信事業の基盤を AI で再構築:データ統合と自律的な連携の実現
スムーズで快適な顧客体験を届けるためには、企業の心臓部となるデータ基盤や統合システム、いわゆる「デジタルコア」がしっかりと連携している必要があります。しかし実際には、サイロ化された古いレガシーシステムが壁になり、身動きが取りにくくなっているケースも少なくありません。
そこで Google Cloud は、BigQuery や Spanner、Vertex AI などを掛け合わせた統合基盤と先進的なインフラを活用し、バラバラだったシステムをひとつの強靭なコアへと生まれ変わらせる支援をしています。
この新しいデジタルコアの上で、司令塔のように働くのが Gemini Enterprise です。これまで部門ごとにサイロ化され、うまく活用できていなかったデータを、AI が強力な推論エンジンとなって自律的に結びつけます。社内に眠る膨大な情報やナレッジをスムーズに連携させることで、BSS(ビジネスサポートシステム)と OSS(オペレーションサポートシステム)という組織の壁を越えたデータ活用が可能に。ネットワークの裏側で起きている技術的な出来事と、お客様の実際の体験を見事に結びつけてくれるのです。
ブースでは、Gemini Enterprise for CX のデモも展示されていました。組織全体の従業員に AI アシスタントを提供し、生産性と社内ワークフローを加速する様子が紹介されています。


Gemini Enterprise for CX の CX Agent Studio で、AI エージェントを作成
リアクティブからプロアクティブへ:AI エージェントが実現する「先回り」の顧客体験
通信業界が抱えがちな「壊れてから直す」というリアクティブなサポート体制も、AI エージェントの力で根本から変わろうとしています。Google Cloud はパートナーの Amdocs と提携し、Gemini Enterprise for Customer Experience と業界特化型 AI オペレーティングシステム「aOS」を組み合わせたエージェント型コンタクトセンターを発表しました。
顧客が不満を感じて電話をかける前に、AI が ネットワークの不調や請求の誤りを察知し、自律的に通信のリセットや請求の修正を行ってトラブルを未然に防ぐ、プロアクティブな顧客体験を実現します。


キャリアの通信制限時にデータパックをレコメンド
デジタルからフィジカルへ広がる AI エージェント
KDDI と連携した Physical AI ロボットのデモでは、ローソンとの実証実験で、商品棚の欠品を Gemini Robotics を活用したエージェント型システムで検知し、ロボットアームが商品を補充する様子が披露されていました。また、このロボットは「黄色のチョコレートを補充してほしい」といった自然言語の指示にも対応しており、Gemini が「脳」として意図を理解・推論し、正確なアームの動きへ変換して目的の商品を選び出します。
専門的な機械学習モデルのトレーニングなしで運用できるため、小売業や製造業などの人手不足解消に向けた実践的なアプローチとして注目を集めていました。「Agentic Telco」がデジタルの枠を超え、フィジカルな世界へと広がっていく未来を実感させてくれました。


KDDI と連携した Physical AI ロボットのデモ
まとめ:AI エージェントがもたらす通信業界の新たな可能性
今回の MWC は、AI を単なるツールとして追加するのではなく、ビジネスの中身に組み込むことの重要性をはっきりと示しました。エージェント型 AI の時代は、スマートフォンの登場以来最大のチャンスだと Google Cloud は位置づけています。
コアネットワークからユーザーが手に持つデバイスまで、エンドツーエンドのインテリジェンスを届けられるのは Google ならではの強みでしょう。パートナーエコシステムとともに、ネットワークを空気のように意識させず、あらゆる体験がシームレスにつながる未来へ。
「From framework to scale: Accelerating autonomous networks at MWC 26」で、今回の発表の詳細を紹介していますので参照ください。



