ML エンジニア: 企業における AI をスケーリングするためのパートナー
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 8 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
多くの業界の企業が、人工知能(AI)や機械学習(ML)の導入を急速に進めています。その背景として、顧客とのマルチチャネルのやり取りによって生成される大量のデータから価値を実現する必要があること、企業運営のあらゆる側面で蓄積されるデータが増えていることなど、多くの要因が挙げられます。この成長により、疑問が提起されます。企業が AI と ML を活用し、スケーリングしていくためには、どのような知識とスキルセットが必要なのでしょう。
この質問に答えるには、企業がデータ活用のため行っている変革の種類を理解することが重要です。
AI / ML の成熟が進む
多くの大企業では、単一チーム内で運用するパイロット版やサンプル版の AI / ML ユースケースを超えて、データ サイエンス プロジェクトを強固にし、ビジネスの他の領域にまで拡大する方法を考え始めています。データの変化や更新に伴い、ML モデルから得られる結果を継続的に最適化する方法を企業は模索しています。
データ サイエンスを主流に
多くの企業にとって、データ サイエンスは主流となりつつあります。製造、マーケティング、サプライ チェーンなど、さまざまな部門で働く人々は、予測分析を業務に取り入れることを熱望しています。こうした状況に伴い、分散したデータ サイエンス チームが企業内のあちこちに出現しています。しかし、予測技術の応用を考えている人の多くは、データ サイエンスのトレーニングが不十分であったり、本番環境スケールの AI / ML のためのインフラストラクチャの基礎知識が乏しかったりします。さらに、企業はアドホックなテクノロジー、ツール、プロセスの急増に直面しています。
複雑さを増すデータ
構造化データや表形式データのユースケースを使って成功を収めた企業は、言語、視覚、自然言語、その他のカテゴリーを含む膨大な量の非構造化データから価値を引き出そうと切望しています。そんな中、ML エンジニアという職種に、企業の期待がますます集まっています。
機械学習エンジニアとは
AI / ML のプラクティスが成熟するにつれ、企業における人材採用が、データ サイエンティスト中心のものから、ML エンジニアリングのスキルを持つ人材へと広がっていくのを見てきました。多くの ML エンジニアの求人情報を見てみると、なぜ ML エンジニアが企業の変革のニーズの一翼を担う存在であるのかがわかってきます。求人情報のフリーテキストで特定の用語が使われる頻度を調べると、いくつかのテーマが浮かび上がってきます。
ソフトウェア工学
ML エンジニアは、ソフトウェア エンジニアリング業務と密接に関係しています。ML エンジニアを採用する企業は、通常、最初の AI / ML パイロット版でなんらかの成功を収めたのち、ML ユースケースの実装に始まり、企業内での ML のスケーリング、運用化、最適化へと、ML の導入曲線を進めていっています。求人情報の多くで、純粋なデータ サイエンスのスキルよりも、ML のソフトウェア エンジニアリングの側面が強調されています。ML エンジニアは、ソフトウェア エンジニアリングのプラクティスを適用し、高パフォーマンスで本番環境に対応した品質のコードを書くことを期待されています。
データ
企業は、ML ワークフローのさまざまな局面において、パイプラインや再利用可能なプロセスを作成できる人材を求めています。また、データ エンジニア(これも需要の高い職種です)と協力し、エンドツーエンドの ML プロセスを通じて、堅牢なデータ プラクティスのためのインフラストラクチャを構築する能力も必要としています。つまり、ML エンジニアには、企業全体の大規模データのクリーンアップ、ラベリング、活用を支援するプロセスやパートナーシップの構築が求められているのです。
本番環境
多くの雇用者は、エンドツーエンドの ML プロセス、特に ML モデルの本番環境への移行経験を持った ML エンジニアを求めています。ML エンジニアは、データ サイエンティストと協力して、継続的なトレーニング、自動検証、モデルのバージョン管理のためのパイプラインを構築し、モデルを本番環境へ移行します。
システム
多くの ML エンジニアは、AI / ML モデルを本番環境に移行するためのアーキテクチャ、システム、ベスト プラクティスの導入の支援を期待して採用されています。ML エンジニアは、クラウド環境上またはオンプレミス インフラストラクチャ上のいずれかの本番環境に、ML モデルをデプロイします。システムやベスト プラクティスを重視することで、データ サイエンスやインフラストラクチャの基礎知識が乏しい人が予測分析から価値を引き出せるようになっても、一貫性を保つことができます。AI / ML の体系化に注力するということは、同時に AI / ML のガバナンス戦略を策定するにあたって、重要な布石にもなります。
こうした ML エンジニアの仕事の定性分析は、特定の求人情報や、私が所属する企業に特化した評価に基づくものではありません。むしろ、企業が AI / ML をスケールするうえで重要な役割を果たす ML エンジニアを募集する一般公開されている求人情報における一般的なテーマを定性的に評価したものです。
ML エンジニアが真価を発揮できるチームとは
企業内において ML エンジニアは、データ サイエンス、ソフトウェア エンジニアリング、研究開発、商品グループ、プロセス / オペレーション、その他のビジネス ユニットなど、さまざまなチームに所属しています。
ML の本番環境移行を支援する人材を求めている業界
ML エンジニアの需要はかつてないほどに高まっています。その採用の最前線にいる業界をいくつかご紹介します。ML エンジニアの需要が高い業界は、コンピュータ / ソフトウェア、金融 / 銀行、専門サービスなどです。
AI や ML が企業におけるプラクティスとして成長し成熟していく中で、ML エンジニアは AI / ML の活用と成果のスケールアップを支援する、非常に重要な役割を担っています。ML エンジニアが本番環境における AI / ML モデルからビジネスの価値を実現するためのインフラストラクチャ、プロセス、ベスト プラクティスを確立することで、データ サイエンティストは最も得意な作業に集中できるようになります。特に、データの量と複雑さが増すにつれて、その傾向が強くなっています。
AI や ML のスキル構築のためにまず始めるべきこと
Google Cloud Skills Boost では、Professional Machine Learning Engineer 認定資格の取得に向けた、ML エンジニアリング スキルの構築を支援するコースを多数提供しています。Google Cloud のプロダクトやサービスが企業の AI や ML 利用をどのように後押ししているのかについて詳しくは、AI と機械学習のプロダクトのページをご覧ください。または、ML エンジニアのニーズに合わせ構築された機械学習プラットフォームである Vertex AI など、Google Cloud サービスを使い始めるための上位リソースを紹介するブログ投稿もご覧ください。
Google Cloud ML のエキスパートやお客様からの最新情報については、Applied ML Summit のオンデマンド セッションをご覧ください。より多くの学習イベントを直接ご確認いただけます。
- UX リサーチ マネージャー Jennifer Otitigbe