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AI & 機械学習

Auditoria.AI による財務チーム向け AI 搭載スマート アシスタントの構築

2023年5月29日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

現在、マーケティング、セールス、さらにはセキュリティまで、大企業のほとんどの部署で、業務を効率化するためにさまざまな SaaS ツールを自由に使うことができます。ですが、その点において、企業の財務や経理に携わる人たちは十分なサービスを受けていません。彼らの日々は今もなお、刺激的な仕事にはほど遠い、ルーチン化した日常業務に費やされています。Auditoria.AI は、AI と自然言語技術を活用してそうした業務を自動化することにより、状況を変えることを目指しています。

当社は、データのコピーと貼り付け、ドキュメントの検証、スプレッドシートのエラーチェックなど、財務業務のうちルーチン化した、繰り返し行われる労力のかかる部分を自動化することで、財務担当者や経理担当者の日常業務を改善し、彼らのチームが集中して価値の高い戦略的洞察をビジネスに提供できるよう努めています。

そのために当社が解決する問題は、次の 3 つの主要な財務業務に作用します。

  • 買掛金: 請求書の支払いなど、会社から出ていくお金を扱います。

  • 売掛金: サービスに対する請求書の発行など、会社に入ってくるお金を扱います。

  • 一般会計: 総勘定元帳チームと CFO の業務で構成される広範な用語で、決算も扱います。

従来、これらのプロセスを効率化するには、より多くの人員を投入する必要がありました。しかし、それは必ずしも、より多くの仕事がより速く、より高い水準で行われることを意味したわけではありません。多くの財務担当者は、請求書の処理、支払いの回収、予定どおりの決算のために、勤務時間外、週末、ときには休日も費やして過労状態に陥っています。

当社は、財務チーム、ベンダー、顧客間のコミュニケーションを処理する SmartBots を利用して、これら 3 つの財務業務のためのソリューションを開発しました。大企業では、このようなマイクロトランザクションが 1 日に何千件も発生するため、財務担当者は問い合わせを読み、要求を解釈して関連情報を探し、できるだけ多く回答することに丸一日を費やしています。ですが、当社の AR ヘルプデスクを利用すれば、請求書のコピーの要求といった売掛金のタスクを自動化できます。当社のテクノロジーは、メールや添付ファイルを読み取り、何が要求されているかを理解します。その後、企業資源計画(ERP)ソフトウェアに接続し、関連情報を取得してメールに添付するため、相手は 60 秒以内に回答を得ることができます。

財務チームが必要とするスマート アシスタントの構築

当社の自動化フローでは、請求書や納税申告書から領収書やメールまで、さまざまな種類のドキュメントを常に扱っています。とは言え、コンピュータと人間の言葉の間で意思の疎通を図ることは複雑な作業です。意図と事実を検出し、文脈を理解できなければ、特定の処理や要求に関連すると思われる情報抽出箇所を特定することはできません。当社のソリューションは、関連する財務業務に対し、適切なドキュメントから適切な文脈にある適切な情報を抽出することで、付加価値をもたらします。すべてをゼロから構築するのではなく、Google Cloud の Document AI を利用して非構造化ドキュメントからデータを抽出し、そのデータを理解、分析しています。

Document AI には、ポストプロダクション ライフサイクルの特定の部分を分析するのに役立つ、事前構築済みのモデルが用意されています。たとえば、Invoice Parser は、請求書からテキストと数値(請求書番号、サプライヤー名、請求額、税額、請求期限など)を抽出します。これらはすべて、当社の SmartBots が抽出ワークフローを実行するために必要なデータです。このようなすぐに使える機能のおかげで、製品開発プロセスや製品化までの時間を大幅に短縮することができます。これは、当社のようなスタートアップのパフォーマンスにとってきわめて重要なことです。

当社は、高品質な情報抽出を実現するため、以前は社内でドキュメントの読み取りを行っていました。その一部を Document AI で自動化したところ、ファイルの抽出精度が 85% になりました。さらにカスタマイズを加え、95% 以上の抽出精度を達成する予定です。

その一方、社内プロセスの効率化も進み、最終的にお客様への迅速なサービス提供につながっています。たとえば、情報がすべて揃っていると仮定した場合、以前は納税申告書の処理に最長 15 分かかっていましたが、現在は数秒で処理しています。

自動化の価値はそれだけではありません。Document AI を利用してドキュメントからの構造化データ抽出を自動化することにより、当社は以下を実現しました。

  • 総勘定元帳の入力データの収集を 90% 以上高速化

  • エラーや漏れを 85% 以上削減

  • 決算にかかる時間を 20% 短縮

  • 正社員の生産性を 60% 以上改善

  • プロセス ワークロードを 75% 以上削減

  • ベンダーのサービス性を 75% 以上改善

  • ベンダーのリスクと不正行為を 50% 以上削減

自動化を活用してイノベーションに集中

当社では、Document AI を利用してプロセスの一部を自動化することにより、新機能の開発やソリューションのさらなる改良に注力する時間も増えました。ドキュメントからカスタム フィールドを抽出するために使われていた時間の 80~90% が、現在は OCR メタデータ ライブラリを使用して自動化されています。

標準的な抽出は Document AI に任せて、当社は抽出後に追加するインテリジェンスに力を入れています。たとえば、ベンダーから請求書が送られてきた場合、当社のアプリケーションはそれがどのベンダーであるかを把握し、ERP の正しいレコードと照合する必要があります。ただし、ドキュメントにバリエーションがあると、その抽出プロセスに支障をきたすおそれがあります。ベンダーの商号と当社の社内システムに登録されている社名が微妙に違っていると、プロセスに遅延が生じます。時間に余裕ができた当社は、ドキュメントから抽出したロゴなどの要素を活用して、社内システムに登録されている正しい会社データとすばやく照合するモデル機能の開発に取り組んでいます。  

このようなメリットを受け、当社は国外向け事業の成長を加速させたいと考えています。Google Cloud の Document AI を活用し、異なる言語でも業務を自動化できるようにすることで、世界中の財務担当者や経理担当者の業務が円滑に進むよう、今後も取り組んでいきます。  


- Auditoria.AI、最高商務責任者 / 最高製品責任者 / 創業者 Adina Simu 氏
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