AI 翻訳を活用して重要なサービスを確実にコミュニティに届けるサンノゼ市の取り組み
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
サンノゼ市は米国において最も多様性に富む都市の 1 つであり、住民の話す言語数は 100 を超えます。私たちは数年前より、公平なサービスの管理と提供を通じて都市コミュニティにおける情報のやり取りを改善する取り組みに着手しました。これを実現するには、第一言語が英語ではない多数の住民からのリクエストを自動化するための新しいアプローチが必要でした。
そこで最初に作成したのが 311 ポータルとアプリでした。これは、住民からの緊急時の問い合わせと、サービス リクエストを効果的に切り分けることにおいて重要なステップでした。このサービスについて、「くすぶっているお悩みは 311 へ、燃えている建物は 911 へ」というフレーズで市民に説明しました。昨年度、サンノゼ 311 で受け付けた電話による問い合わせは 210,000 件近くにおよび、さらに SJ 311 アプリからのサービス リクエストは 211,000 件でした。
このポータルとアプリを通じてオムニチャネルを市民に提供したことで、市民は行政とつながり、さまざまな改善をリクエストしたり、役立つ情報にアクセスしたり、必要な場合に緊急の支援を受けたりできるようになりました。
多様なコミュニティに確実にサービスを提供するためには、言語翻訳サービスを活用して全市民にサービスを公平に提供できる必要がありました。そこから、Google.org、SpringML、Google Cloud、市長や市の CIO を含むその他の関連パートナーと密接に連携した取り組みが始まりました。
コミュニティ エンゲージメントを念頭に置いた公共サービスの構築
最初に公開した My San José ウェブサイトとモバイルアプリで使用した既成の翻訳サービスは、役に立ちませんでした。精度が低く、一貫性のあるサービスを全市民に提供するというニーズを満たせなかったのです。他の多くのオプションを検証した結果、私たちは SpringML および Google Cloud と提携し、仮想エージェントなどの他のテクノロジーと併せて AutoML Translation を活用することに決めました。
オープンな RFP プロセスによって選択された SpringML は、複数のシステムを統合し、インターフェースを構築して最適化するなどの作業で役立ち、アプリやウェブサイトをより直観的に管理できるようになりました。これは、フェローシップ プログラムを通じて Google.org から提供された概念実証、つまり成功を実現するためにサンノゼ市、Google Cloud、SpringML に示されたロードマップに基づいています。
SpringML によって、必要なサービスを仕様に合わせて予定どおりに実現できました。さらにチーム向けのトレーニング セッションからは、次のような付加価値がもたらされました。つまり、AutoML で対応できる内容をすべて理解し、住民が使用する土地の言葉を簡素化するなどの拡張機能も活用できるようになったことで、住民の話す自然言語に関係なく簡単にアクセスできる行政サービスを実現できました。
AutoML を利用して My San José アプリの翻訳機能を確立した後は、SpringML は Dialogflow 仮想エージェントの組み込みにおいても役立ちました。Dialogflow によって人員配置の慣例も変わりました。これは、昨年からの COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の対応においてサービスレベルが頻繁に変化する中で、ますます重要になってきています。
コミュニティのニーズへの対応
アプリを立ち上げて稼働したので、次のステップはアプリのテストや改善などの作業を手助けしてくれるコミュニティのメンバーを集めることでした。私たちはアプリとウェブサイトをただコミュニティに提供するだけではなく、コミュニティからの役立つ意見を取り入れて、すぐ活用できるようにしたいと考えました。
Google Cloud サービスで支えられた精度の高い翻訳により、少ないコミュニティ メンバーの専門知識を活用して翻訳を評価できました。AutoML Translation と用語集は、目標達成に向けた強力な組み合わせであることが証明されました。
最初のターゲットは、スペイン語とベトナム語の翻訳でした。現在、スペイン語の自動翻訳では 90% の精度が確認できており、ベトナム語についはて引き続き改善に取り組んでいます。私たちは、このサービスで使用する言語の簡素化に引き続き取り組み、それにより言語の使いやすさを大きく改善します。
この作業には、主に電話で 311 サービスを利用するコミュニティ メンバー向けの最適なサービスの提供も含まれます。Google Cloud Contact Center AI を利用することで、年中無休での電話受付を効率よく管理し、英語を話す住民だけでなくスペイン語を話す住民にも効果的に対応できるようになりました。住民がどちらの言語で連絡してきた場合でも、効率よくサービスを提供できます。
タイムリーな公開
私たちは、自分たちが行ってきた仕事を誇らしく思います。多くの行政サービスを市民が年中無休で利用でき、しかもさまざまなチャネル(言語)からアクセスできるようにしました。母国語に関係なくすべての住民が活用できる一貫したサービスは、AI のおかげで日々改善されていきます。私たちは、より優れたサービスをより多くの住民に提供できるよう、さらに多くの言語の翻訳機能を組み込むことに積極的に取り組んでいます。
このプロセスを開始したのは数年前ですが、2020 年後半に行った機械学習の言語翻訳と顧客管理システムの統合は誠に時宜を得ていました。というのも、COVID-19 のパンデミック対応にこれを組み込むことができたからです。
また、米国内の他の自治体と協力し、これまでに学んだ教訓と成功を共有して、公平な市民サービス提供の普及に努めています。
これからも SpringML、Google Cloud、その他のパートナーとの連携のもと、市民が満足できる公平で優れた行政サービスの改善に取り組んでいく所存です。
Google Cloud パートナーの活用方法について詳しくは、こちらをご覧ください。
-サンノゼ市最高技術責任者 Jerome Driessen 氏
-サンノゼ市 SJ 311 サービス プロジェクト マネージャー German Sedano 氏